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第2章

放課後

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 私は放課後、アン公爵令嬢とその取り巻きに拘束され、空き教室に連行された。


 取り巻きたちによって両腕を取られているため、身動きが取れない。


「ここに座りなさい!」


 アンは休み時間とは打って変わり、鋭い命令口調で埃っぽい椅子を指差した。

「さあ、早く!」

「えっ、えっ、何?」

 私は困惑して、でも逃げられないのでアンの言う通りにする。


 埃まみれの椅子にハンカチを敷き、腰を下ろした。

「それと、何よここ」


 アンは顔を歪め、口をハンカチで押さえる。

「私、埃アレルギーなんだけど。なんでここチョイスしたの!?」


 急にアンが怒鳴り声をあげ、私は驚いて身を縮こませる。


 しかし、怒っているのは当然私ではなく、取り巻きのうちの1人だ。

「ごめんなさい、アン様」

 彼女は申し訳なさそうに言う。

「ここしか空いてなかったんです」

「チッ」


 アンの令嬢らしからぬ舌打ちに、私はまた驚いた。


「まあ良いわ。私は今日時間ないし。今日のところは勘弁してあげる」


 アンはそう言って、私に向き直った。

「よく聞きなさい、セレーナ」

「な、何?」


 アンの真っすぐな目に耐え切れず、私は少し視線を逸らせた。

「良い。殿下との婚約破棄状を、今すぐに取り下げなさい」

「えっ」

「殿下は浮気をしていない。すべてはあんたの勘違いよ」

「い、いや、でも」


 でも、テレサが――。


「あの狂った馬鹿女と殿下、どっちを信じるのよ!」

「馬鹿女って」


 それはあまりにも失礼だと思う。

 不良債権引き取ってくれたし。


「あのねぇ」


 アンは思いっきり嘆息する。

「殿下は、あんたのことが好きなのよ」

「……はあ」

「好き過ぎて、傍から見れば頭おかしいんじゃないかって思う程にね」


 本当にそうなのだろうか。

 私にはまるで見覚えがないけれど。


「あんたに仇なす人間は、全員排除したり処罰したりしたのよ。もう二度とそんなことしないように」


 何を思い出したのか、細かく震えだすアン。

「あのね、あの人は、殿下は正直おかしい。狂ってるって言っても過言じゃないの」

「はあ」

「あんたを自分の手元に置いておくためなら、なんだってする。そういう人間なのよ。あんたが殿下の傍から去れば、何をしでかすかわからない――だから、さっさと殿下に謝ってちょうだい。私たちの平穏のために。わかった?」


 と何度も念押しをされ、私は彼女の勢いに負けて頷いた。

「わ、わかった」

「それなら良かったわ――じゃあ、私は帰るわね。今日デートあるから」


 私の返事を聞いたアンはホッとした顔で、颯爽と教室から出て行った。
 
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