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第1章
転生
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「……っ!」
「……様!」
「お嬢様!」
「大丈夫ですか!?」
突然頭上から大声で叫ばれ、目を覚ます。
「んもう」
うるさいなあ、と私は瞼を擦った。
「……何よぉ、お母さん」
目の奥が赤く光っている。
眩しい。
電気が煌々と点いているようだ。
寝返りを打って自身の身体で影を作り、もう一度寝る体勢に入る。
「……」
通常では息を飲む音が聞こえ、また通常から声が放たれる。
「お嬢様、しっかりしてください。私はあなたのお母様ではありませんよ。メイド長のテリアです」
「んぁ? メイド長? テリア? 何言ってんのよ、お母さん……」
急にどうしたんだろう、本当。
わけわかんないこと言い出して。
お母さん、変にお茶目なとこあるから、中世ヨーロッパ風のメイドの真似でもしてるんじゃないかなあ。
というか、どうしてお母さんが私の部屋にいるんだろう。
あれ?
今日行くって、連絡来てたっけ?
にしても、辞めてほしい。
せっかくの休みなのに。
私の会社が結構ブラックってこと、お母さん知ってるはずよね。
なんでゆっくり寝かせてくれないのかしら。
土日しっかり休まないと、次の週の仕事に響くのよね。
「レティシア様、何をおっしゃってるんですか」
だけど、お母さんまだそのよくわからない「おままごと」を続けたいらしい。
レティシア?
何言ってんのよ。
「レティシア? 誰それ?」
「お嬢様、先ほどからおかしなうわ言をおっしゃられているようですが」
「うわ言? おかしいのはお母さんの方じゃん」
寝ながら話すのが面倒くさくなり、仕方なく起き上がる。
あー、もう。
何がレティシアよ。
何がメイド長よ。
それって、私が今やってる乙女ゲームのキャラクターじゃないの。
お母さんてもしかして私のゲーム勝手にやった?
……嘘でしょ。
乙女ゲームの趣味親バレするとか、死ぬほど恥ずかしいんだけど。
「レティシア様、しっかりなさってください」
「もー、うるさいなあ」
私は瞼を擦り、大きく伸びをした。
そこで初めて、私は目を開けた――。
「えっ」
私は目の前の光景を凝視する。
私の住む狭いワンルームの、何倍も広い部屋。
ロココ調の巨大な家具や調度品。
天井には繊細な装飾のなされたシャンデリア。
床は、転倒すればすぐにあの世行き決定の大理石。
そして、目の前には――。
「えっ、誰?」
お母さんじゃない。
お母さんと同じ年齢くらいだけど、もっと美人でキツそうな顔の女性が、フリフリのメイド服を着て私を見ている。
「だから」
メイド服の女性が言った。
「メイド長のテリアです。レティシアお嬢様」
「レティシア……」
私は顔を両手で押さえながら、傍にある鏡台に視線を向ける。
その大きな鏡に映る人物は、見慣れぬ美しい金髪の美少女。
「レティシア・オークレール」
それが、その少女の名前だ。
刹那、脳裏に凄まじい情報の波が流れ込む。
小さな脳での処理が追い付かず、私の視界はぐるりと暗転した。
「……様!」
「お嬢様!」
「大丈夫ですか!?」
突然頭上から大声で叫ばれ、目を覚ます。
「んもう」
うるさいなあ、と私は瞼を擦った。
「……何よぉ、お母さん」
目の奥が赤く光っている。
眩しい。
電気が煌々と点いているようだ。
寝返りを打って自身の身体で影を作り、もう一度寝る体勢に入る。
「……」
通常では息を飲む音が聞こえ、また通常から声が放たれる。
「お嬢様、しっかりしてください。私はあなたのお母様ではありませんよ。メイド長のテリアです」
「んぁ? メイド長? テリア? 何言ってんのよ、お母さん……」
急にどうしたんだろう、本当。
わけわかんないこと言い出して。
お母さん、変にお茶目なとこあるから、中世ヨーロッパ風のメイドの真似でもしてるんじゃないかなあ。
というか、どうしてお母さんが私の部屋にいるんだろう。
あれ?
今日行くって、連絡来てたっけ?
にしても、辞めてほしい。
せっかくの休みなのに。
私の会社が結構ブラックってこと、お母さん知ってるはずよね。
なんでゆっくり寝かせてくれないのかしら。
土日しっかり休まないと、次の週の仕事に響くのよね。
「レティシア様、何をおっしゃってるんですか」
だけど、お母さんまだそのよくわからない「おままごと」を続けたいらしい。
レティシア?
何言ってんのよ。
「レティシア? 誰それ?」
「お嬢様、先ほどからおかしなうわ言をおっしゃられているようですが」
「うわ言? おかしいのはお母さんの方じゃん」
寝ながら話すのが面倒くさくなり、仕方なく起き上がる。
あー、もう。
何がレティシアよ。
何がメイド長よ。
それって、私が今やってる乙女ゲームのキャラクターじゃないの。
お母さんてもしかして私のゲーム勝手にやった?
……嘘でしょ。
乙女ゲームの趣味親バレするとか、死ぬほど恥ずかしいんだけど。
「レティシア様、しっかりなさってください」
「もー、うるさいなあ」
私は瞼を擦り、大きく伸びをした。
そこで初めて、私は目を開けた――。
「えっ」
私は目の前の光景を凝視する。
私の住む狭いワンルームの、何倍も広い部屋。
ロココ調の巨大な家具や調度品。
天井には繊細な装飾のなされたシャンデリア。
床は、転倒すればすぐにあの世行き決定の大理石。
そして、目の前には――。
「えっ、誰?」
お母さんじゃない。
お母さんと同じ年齢くらいだけど、もっと美人でキツそうな顔の女性が、フリフリのメイド服を着て私を見ている。
「だから」
メイド服の女性が言った。
「メイド長のテリアです。レティシアお嬢様」
「レティシア……」
私は顔を両手で押さえながら、傍にある鏡台に視線を向ける。
その大きな鏡に映る人物は、見慣れぬ美しい金髪の美少女。
「レティシア・オークレール」
それが、その少女の名前だ。
刹那、脳裏に凄まじい情報の波が流れ込む。
小さな脳での処理が追い付かず、私の視界はぐるりと暗転した。
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