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話①

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「……」

「……」

「……」


 き、気まずい……。

 いや、そんなこと思っちゃ駄目なんだろうけど。


 私はフィルを部屋に招き入れた。

 が、フィルはソファに座ったまましばらく黙り込んでいる。

 私もなんて声をかけて良いかわからず、向かいのソファに腰かけたままだ。


 気まずい。


 理由は簡単。

 以来、私とフィルはまともに会話出来ていないからだ。


 フィルはフィルで何かと忙しそうだったし、私は私で学校へ行く必要があった。


 こっちとしては別に距離を置こうとかそんな考えは毛頭なかったけど、実際問題物理的な距離を置いていたことによる絶妙な居心地の悪さがそこにはあった。


「フィル、あの――」

「お嬢様」


 沈黙が我慢出来ずに声を発すると、フィルと会話が被ってしまう。


「あっ、ごめんなさい」

「いや、俺が……」


 会話が被ってしまうことなど今までに一度もなかった。

 フィルが気を遣ってくれていたのか、それともそんな遠慮をすることがないほど私たちが息ぴったりだったのか。


 少なくとも、初めての事態で余計に気まずくなる。


「ごめんなさいね、先どうぞ」

「いや、お嬢様が」

「私は良いの。用があって来たのはフィルの方でしょ?」

「まあ、それはそうだけど」


 フィルはもごもご何か言った後、咳払いをして空気を変える。


「俺がここに来たのは、あんたに聞きたいことがあったからだ」

「聞きたいこと?」


 いやに心臓がドキドキしていた。


「この前の返事のことだ」

「この前って」

「まさか、忘れたわけじゃないよな?」

「あ、当たり前じゃない」


 私は慌てて首を横に振った。

「忘れてないわよ」

「それは良かった。じゃあ」


 フィルは真っすぐに私を見つめた。

「ここで、その返事は聞かせてくれるな?」


 私は唾をごくりと飲み込んだ。



 


 
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