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天下 ~レナ視点~

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 その娼館は私の天下だった。


 案の定、私の珍しい血筋を求めて多々男が押し寄せてきた。


 小汚いおじさんの相手をするのは正直吐きそうなほど嫌だったが、それは極まれ。

 基本的にそういう不衛生で金のないタイプは娼館の方が追い出してくれている。

 
 たいていは落ち着いた小金持ちのおじさんか、若気の至りで娼館に通う金持ちの御曹司。


 相手にするには申し分ない相手だった。


 私は1ヵ月も経たないうちに、この娼館のNo.1となった。


 自分でも薄々気づいていたが、私はこの仕事が転職なのかもしれない。


 1日のうち3回ほど我慢すれば、あとは自由。


 それに、この小さなコミュニティの中の順列は、「誰が一番売れているか」。

 
 決して、身分の差なんかじゃない。

 貴族社会みたいに、「公爵令嬢だから」「庶民だから」というただそれだけの理由で優劣が決まるわけではない。


 要は、成績を上げた者こそが頂点に君臨する、完全実力主義の世界なのだ。


 それを1ヵ月足らずで成し遂げた私は、もはや伝説だった。

 いや、私の能力が高いのではなく、が酷いだけなのかもしれない。


 おかげさまで、私は王のように振舞うことが出来た。

 皮肉にも、貴族社会から逃げだした後のことだったが。


 念願の地位を手に入れた私は、玉座に座って周囲からの手厚いサービスを受けることが出来た。


「仰いでちょうだい。暑いわ」

「はい」

「飲み物用意して」

「はい」

「食べ物は? お腹空いたんだけど」

「すぐにお持ちいたします」

「マッサージもよ。さあ早く」

「はい」

「ちょっと何これ? 不味いんだけど。こんなもの私に飲ませないでよ!」


 私はグラスを1人の女に傾けた。

 ワインで女が全身濡れる。


「なんでこんな安っぽいもの飲ませんのよ。私が誰かわかってんの? あんたたち」

「申し訳ありません」


 ワインのキツい臭いのする女が頭を下げる。


 確かこの女は、私がここに来る前のNo.1だった娼婦だ。


 こういうプライドの高い女を足で使うのが何よりの楽しみでもある。


「何ぼさっとしてんのよ。新しいの持ってきて」

「……はい」


 女は無表情のまま厨房へ向かって行った。

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