127 / 135
天下 ~レナ視点~
しおりを挟む
その娼館は私の天下だった。
案の定、私の珍しい血筋を求めて多々男が押し寄せてきた。
小汚いおじさんの相手をするのは正直吐きそうなほど嫌だったが、それは極まれ。
基本的にそういう不衛生で金のないタイプは娼館の方が追い出してくれている。
たいていは落ち着いた小金持ちのおじさんか、若気の至りで娼館に通う金持ちの御曹司。
相手にするには申し分ない相手だった。
私は1ヵ月も経たないうちに、この娼館のNo.1となった。
自分でも薄々気づいていたが、私はこの仕事が転職なのかもしれない。
1日のうち3回ほど我慢すれば、あとは自由。
それに、この小さなコミュニティの中の順列は、「誰が一番売れているか」。
決して、身分の差なんかじゃない。
貴族社会みたいに、「公爵令嬢だから」「庶民だから」というただそれだけの理由で優劣が決まるわけではない。
要は、成績を上げた者こそが頂点に君臨する、完全実力主義の世界なのだ。
それを1ヵ月足らずで成し遂げた私は、もはや伝説だった。
いや、私の能力が高いのではなく、先輩方が酷いだけなのかもしれない。
おかげさまで、私は王のように振舞うことが出来た。
皮肉にも、貴族社会から逃げだした後のことだったが。
念願の地位を手に入れた私は、玉座に座って周囲からの手厚いサービスを受けることが出来た。
「仰いでちょうだい。暑いわ」
「はい」
「飲み物用意して」
「はい」
「食べ物は? お腹空いたんだけど」
「すぐにお持ちいたします」
「マッサージもよ。さあ早く」
「はい」
「ちょっと何これ? 不味いんだけど。こんなもの私に飲ませないでよ!」
私はグラスを1人の女に傾けた。
ワインで女が全身濡れる。
「なんでこんな安っぽいもの飲ませんのよ。私が誰かわかってんの? あんたたち」
「申し訳ありません」
ワインのキツい臭いのする女が頭を下げる。
確かこの女は、私がここに来る前のNo.1だった娼婦だ。
こういうプライドの高い女を足で使うのが何よりの楽しみでもある。
「何ぼさっとしてんのよ。新しいの持ってきて」
「……はい」
女は無表情のまま厨房へ向かって行った。
案の定、私の珍しい血筋を求めて多々男が押し寄せてきた。
小汚いおじさんの相手をするのは正直吐きそうなほど嫌だったが、それは極まれ。
基本的にそういう不衛生で金のないタイプは娼館の方が追い出してくれている。
たいていは落ち着いた小金持ちのおじさんか、若気の至りで娼館に通う金持ちの御曹司。
相手にするには申し分ない相手だった。
私は1ヵ月も経たないうちに、この娼館のNo.1となった。
自分でも薄々気づいていたが、私はこの仕事が転職なのかもしれない。
1日のうち3回ほど我慢すれば、あとは自由。
それに、この小さなコミュニティの中の順列は、「誰が一番売れているか」。
決して、身分の差なんかじゃない。
貴族社会みたいに、「公爵令嬢だから」「庶民だから」というただそれだけの理由で優劣が決まるわけではない。
要は、成績を上げた者こそが頂点に君臨する、完全実力主義の世界なのだ。
それを1ヵ月足らずで成し遂げた私は、もはや伝説だった。
いや、私の能力が高いのではなく、先輩方が酷いだけなのかもしれない。
おかげさまで、私は王のように振舞うことが出来た。
皮肉にも、貴族社会から逃げだした後のことだったが。
念願の地位を手に入れた私は、玉座に座って周囲からの手厚いサービスを受けることが出来た。
「仰いでちょうだい。暑いわ」
「はい」
「飲み物用意して」
「はい」
「食べ物は? お腹空いたんだけど」
「すぐにお持ちいたします」
「マッサージもよ。さあ早く」
「はい」
「ちょっと何これ? 不味いんだけど。こんなもの私に飲ませないでよ!」
私はグラスを1人の女に傾けた。
ワインで女が全身濡れる。
「なんでこんな安っぽいもの飲ませんのよ。私が誰かわかってんの? あんたたち」
「申し訳ありません」
ワインのキツい臭いのする女が頭を下げる。
確かこの女は、私がここに来る前のNo.1だった娼婦だ。
こういうプライドの高い女を足で使うのが何よりの楽しみでもある。
「何ぼさっとしてんのよ。新しいの持ってきて」
「……はい」
女は無表情のまま厨房へ向かって行った。
19
お気に入りに追加
7,070
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
【1/23取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【取り下げ予定】さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
とある婚約破棄の顛末
瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。
あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。
まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。
【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる