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状況説明

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 簡潔に言うと、あの罠を張ったのは私だ。


 木々の間を利用して、蔓を繋ぎ合わせて中央部分に大きな石を設置した。


 大きな石というか、ほぼ岩みたいなサイズのものを木の上まで持っていくのには苦労したが、蔓で作った網を駆使してどうにかこうにか作った代物である。


 構造は簡単。

 地面すれすれに設置した蔓の縄に引っかかると、木の枝が折れて石が降ってくるような仕組みだ。


 至極簡易的な罠だが、あの我を忘れていた男になら引っかかるだろうと踏んだ。


 私はわざと音を立てて近くにおびき寄せ、レナの父親を嵌めた。


 まさかこんなに上手く行くとは。

 
 今思えば、あんなド素人が見様見真似で作った狩り用の罠を信じた私もどうかと思う。

 下手すれば死んでいたかもしれないというのに。


 ただ、あの罠について教えてくれた父には感謝しかない。

 お父様は狩りが好きで、幼いころは私を良く森に連れ回していた。

 王子と婚約してからは、花嫁修業に忙しくてそれどころではなくなってしまったが。


 良くそんな幼いころの話を思い出せたと、自分で自分を褒めたくなる。


 私の話を聞いたフィルは、膝から崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ。


「……なんだよそれ」

「えっ」

「本当、あんたって人は――」


 肩と声が震えている。


 何か気に障ることでもしたのかと心配したが、どうやらそうではないらしい。


 フィルは突然、堰が切れたように笑い出した。

 地面に座ったのは、力が抜けて立てなくなったのだろう。


「なんでそんなに笑うのよ」

 私はムッとした。

「大変だったのよ。笑いごとじゃないの」


「いや、それはわかってるけどっ」


 涙を拭くフィル。

「面白すぎだろ! 男爵を獣みたいに狩るって。さすがだよお嬢様は。あっはははは!」


 フィルが大声を出して笑うの、久しぶりに見たな。

 馬鹿にされているように見えなくもないけど。

 
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