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居場所 ~フィル視点~

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 お嬢様は今どこにいるのだろうか。


 走りながら、必死に俺は頭をフル回転させた。




 執務室から飛び出した俺は、今にもクビにされそうな御者を捕まえ、学園に戻らせた。


 道路では法定速度以上のスピードは出せない。

 馬にも当然限界はある。


 屋敷から学園までは30分もかからないはずなのに、俺にとってこの時間は永遠なものに感じた。


 嫌な想像が、俺の脳裏に過る。


 お嬢様が危険に晒されている。


 誘拐?

 それとも、暴漢に襲われた?


 どちらにせよ、早くお嬢様の無事を確認しなければ。


 時間がかかればかかるほど、お嬢様が無事である可能性は下がってくる。


 ひとまず、お嬢様が最後にいたはずの学園に戻り、彼女を見かけた目撃者を探そう。


 最悪の予感が消えない。


 スカーレットお嬢様に逆恨みしている連中のうち、男爵家は未だ自由の身だ。

 
 あいつらが――あるいは、別の者か?


 それならば、一体どういう理由で?


 クソ。

 なんで俺がお嬢様の傍についてやれないときに限って。


 いや、俺のせいか?

 俺が約束したのに、それを違ってしまったから――。


 落ち着け、俺。


 大きくかぶりを振る。


 今は余計なことを考えるな。


 それどころじゃないだろ。


 今考えるべきことは、お嬢様がどこにいるかだ。


 もし何者かに襲われている場合、お嬢様のことだから見つかりにくい場所に隠れるのだろう。


 幼少期のかくれんぼの際も、良くとんでもないところで隠れて使用人たちの寿命を何度も縮ませていた。

 
 相手に見つからないためには、自分自身が多少危なくてもあまり気にしないタイプ。


 すると、可能性としては――。


 俺は自分の考えを信じ、校舎ではなく馬小屋がある方角に向かって走った。


 夕日は、今にも山影に沈もうとしていた。
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