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相談

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 私の話を聞いたティファニーは、くすくすと楽しそうに笑っている。


「笑い事じゃないわよ」

 私がムッとすると、

「私からすれば笑い事よ」

 と、ティファニーが言った。

「相談だって深刻そうな顔して言うから何事かと思ったけど。進展があって何よりだわ」


 こちらとしては、深刻な問題なんだけどな。


 とは、わざわざ口に出して言わなかった。


 フィルに究極の選択を迫られた私は、パニックになってティファニーに連絡をしたのだと思う。

 その辺の記憶はあまりないけど。


 そうして次の日、何事かと血相を変えて話しかけてきたティファニーに昨日の話をすると、途端に爆笑し出したわけだ。


「進展って……」

「まあ良いじゃないの。あなたのやったことはなかなかに酷いけれど、それでも一応は向こうからアプローチがあったわけだし」

「ティファニーは気づいてたの?」

「もちろん気づいてないわ」

「ないんかい」

「だって私、フィルとそんなガッツリ話したことないもの。あなたの使用人だし」


 まあ、それはそうか。

 ティファニーがフィルと本格的に交流を持つようになったのは、彼が男爵の地位を得て学園に通うようになってからだ。


「でもそれはそうよねぇ」

 ティファニーは遠い目をして言った。

「何がそうなの?」

「貴族出身だとはいえ、苦労し続けた幼少時代に救いの手を差し伸べてくれた美少女。彼女は自分を人のように扱い、いつまでも気にかけてくれている。そりゃ好意くらいは持つわよね」

「……」

「しかもその子は第一王子の婚約者で、彼に一途。そんな子に対する好意は、壁があるからこそますます盛り上がる――」


 そんな小説みたいなストーリー、勝手に妄想されても……。


「でも、どうすれば良いのかわからないの」

「何が?」

「だってフィルは友達で、それに使用人だし……。でも、フィルと距離を置くのは嫌なの」

「我がままねぇ、あなた。若干殿下に似てきたんじゃない?」

「えっ。無理無理無理無理。絶対嫌」

 私は全力で拒否した。


「否定し過ぎじゃない?」


 ティファニーは少し笑った。

 だけどすぐに真剣な表情に戻る。


「人間関係は変わるわ、スカーレット。あなたが殿下を切り捨てたようにね。そうして今、フィルもあなたをどういう立ち位置にするか悩んでいる。それをあなたの意思に任せようというのは、ちょっと情けないと思うけど。まあ、くれぐれも後悔するような選択をしないことね」

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