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悲劇の2人②

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 冷たい声色でそう言った私。

 
 殿下はそれを聞いて、顔を強張らせる。


「相変わらず性格の悪い女だな、お前は」

「はあ」


 別に私の性格は悪いわけじゃない。

 普通だ。


「それはどうも」

「それに器も小さく、正直顔も良いとは言えない」

「はあ」


 向こうで、話を聞いていたティファニーが殿下を睨む。


 苦手な彼女が近くにいるにも関わらず、彼は随分と雄弁だった。


「勉学も妃教育も、あまり成績が良くなかったな」

「……」


 なんで私はここまで言われなくちゃならないのだろう。


 私は完全にこの人となんの関係もないはずなのに。

 全くの赤の他人から、こんなにも罵られている。


「お前を見ると、やはりレナの素晴らしさが目を見張る」

「は?」

「レナは美人で頭も良い。貴族社会という冷たい空気の中、たった1人庶民として頑張っている健気さも持ち合わせている。お前とは正反対だ」


 私はティファニーと顔を見合わせた。


 一体何がしたいのだろう、この人は。


 わざわざ自分の愛人の自慢話をしに、ここまでやってきたのか。


「あの」

 私はげんなりして言った。

「お話というのは、それだけですか? でしたらお帰りください。私はティファニーと勉強会がありますので」


「ふん、せっかちだな」


 殿下は鼻で笑った。

「そんなんだから、男に捨てられるんだよ」


 捨てられたつもりはない。

 こっちから捨てたのだ。


 だがまあ、こんな細かいところをいちいち追及してもキリがない。


 私は面倒さを隠すこともなく大きなため息をつき、

「では、手短に。お願いします」

 と、言った。


「では、単刀直入に」


 殿下は1つ咳ばらいをする。

「そんな素晴らしい女を、お前の使用人――フィルと言ったか――に譲ってやろう」

「……は?」


 今なんて言った?

 この人。

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