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困惑
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「……えっ」
私は困惑して、思わず声をあげた。
「えっ、何? どういうこと?」
「お嬢様はここにいろよ」
フィルはそう言ってすくっと立ち上がり、教室から廊下に出た。
「なんだお前は?」
「俺は先日国王陛下より男爵位を承った、フィルと申します」
ガラスの窓の向こうで、フィルは丁寧に頭を下げる。
「随分ぶしつけな真似をされているようですが、一体この学園にどんなご用があって来たんですか?」
「何度も言ってるだろ! 我が娘のことだ」
男が吐き捨てるように言う。
「レナに対して暴力を振るい、しかもそれをなかったことにするなど。一体公爵令嬢スカーレットと第一王子はどういう神経をしているんだ?」
ようやくここで、廊下で叫んでいるのが例の男爵であることに気づいた。
にしても不思議なのは、なぜあの事件を私のせいにしているのかということだ。
「どういう神経をなさっているのかというのは、こちらの話です」
フィルは言った。
「ここは学園。あなたにはなんの関係もありません」
「関係ある! レナの保護者で――」
「そのレナさんとやらは庶民の方で、あなたは貴族ですよね?」
「……」
「血の繋がりがあろうとなかろうと、あなたがレナさんを男爵令嬢としてあなたとレナさんは便宜上他人として扱われています。つまり、あなたはこの学園に堂々と入ってこれる資格は持っていない」
フィルの言葉は理にかなっていた。
レナを「娘」と表しているのに、レナはあくまで庶民だ。
つまり、男爵は赤の他人の少女を育てている奇特な人間にしか過ぎない。
「学園に入ってこれるのは、保護者でも学園側が許可した期間だけです。今はその期間ではないし、あなたはそもそも保護者ではない。同じ『男爵』という身分の貴族が迷惑をかけているところを見るのはとても忍びないので、こちらとしては大人しく帰っていただきたいのですが」
良く回る口だなあと感心した。
もともと口達者で頭の回転の速い子だったけど、貴族の称号を得ることでそれに拍車がかかっている。
歳上相手に対して物怖じすることなく自分の意見を伝えられるのは、彼の美徳だと思う。
私は困惑して、思わず声をあげた。
「えっ、何? どういうこと?」
「お嬢様はここにいろよ」
フィルはそう言ってすくっと立ち上がり、教室から廊下に出た。
「なんだお前は?」
「俺は先日国王陛下より男爵位を承った、フィルと申します」
ガラスの窓の向こうで、フィルは丁寧に頭を下げる。
「随分ぶしつけな真似をされているようですが、一体この学園にどんなご用があって来たんですか?」
「何度も言ってるだろ! 我が娘のことだ」
男が吐き捨てるように言う。
「レナに対して暴力を振るい、しかもそれをなかったことにするなど。一体公爵令嬢スカーレットと第一王子はどういう神経をしているんだ?」
ようやくここで、廊下で叫んでいるのが例の男爵であることに気づいた。
にしても不思議なのは、なぜあの事件を私のせいにしているのかということだ。
「どういう神経をなさっているのかというのは、こちらの話です」
フィルは言った。
「ここは学園。あなたにはなんの関係もありません」
「関係ある! レナの保護者で――」
「そのレナさんとやらは庶民の方で、あなたは貴族ですよね?」
「……」
「血の繋がりがあろうとなかろうと、あなたがレナさんを男爵令嬢としてあなたとレナさんは便宜上他人として扱われています。つまり、あなたはこの学園に堂々と入ってこれる資格は持っていない」
フィルの言葉は理にかなっていた。
レナを「娘」と表しているのに、レナはあくまで庶民だ。
つまり、男爵は赤の他人の少女を育てている奇特な人間にしか過ぎない。
「学園に入ってこれるのは、保護者でも学園側が許可した期間だけです。今はその期間ではないし、あなたはそもそも保護者ではない。同じ『男爵』という身分の貴族が迷惑をかけているところを見るのはとても忍びないので、こちらとしては大人しく帰っていただきたいのですが」
良く回る口だなあと感心した。
もともと口達者で頭の回転の速い子だったけど、貴族の称号を得ることでそれに拍車がかかっている。
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