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誤算 ~セシル視点~

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 俺は早速友人たちに、


「俺からスカーレットをこっぴどく振ってやった」

 
 と、言い触らした。


 あいつらは、いつも自分たちに注意してくるスカーレットを内心嫌っていたから、俺の話を聞いてそれはそれは喜んでいた。


「えっ、何?」

「なんで? どうやって?」


「鬱陶しいんだよ、あいつ。マジで」


 俺は答えた。

「いちいち突っかかってくんの。だから、速攻で捨ててやったわ(笑)」


「ぎゃはははは。性格悪っ」

「スカーレットちゃん、どんまーい」


 友人たちは、こういう他人の不幸が好きだった。

 それゆえに、面白おかしく周囲に別れたことを触れ回っていく。


 この国では、令嬢が婚約者に捨てられることは「傷物」とされ、周囲から忌み嫌われる。


 誰も、他人のお古を譲り受けようという心優しい奴ではないから、これで一生スカーレットは結婚出来なくなる。


 あの女には、あんなに馬鹿にした俺しかいなくなるわけだ。


 ――だが、ここで誤算が生じてしまう。


 俺は、

「噂を流すのは辞めてほしい」

 だの、

「あなたのことを傷つけてしまってごめんなさい」

 だの、

「お詫びとして、あなたに一生を尽くします」

 だの、

 そんなことを言ってスカーレットが土下座すれば、許してやらんこともないと考えていた。


 あの女ははっきり言ってカスだが、婚約者としては多少なりとも役に立つ。

 あいつの家柄は公爵家で、金も地位も持っている。


 奴隷になるなら、結婚ぐらいはしてやっても良いと思っていた。


 しかしスカーレットは、何を思ったのか、婚約破棄の件を父上と母上に報告しやがったのだ。


 あいつ、一体どういう神経しているんだ?


 おかげで父上と母上に大層叱られてしまった。


「お前、相手がどういう家柄かわかってやっているのか!?」

「公爵家との繋がりを失えば、我が王家は強力な後ろ盾を失うことになってしまうのよ」

「お前のせいで数百年続く我が国の栄光が失われてしまったら、どう責任を取るつもりだ!?」


 普段は俺にまったく興味を示してこないくせに、こういうときにだけ揚げ足を取ろうとか、うちの親はマジでクソだ。


「お前なんぞを未来の王として据えようとしていた私が馬鹿だった」

 と、国王。

「今すぐ他の女を捕まえるかして自分で自分の尻拭いをしなければ、弟たちに継がせることにしましょうよ」

 と、王妃。

「そうだな――こやつの存在価値は長男という立場ただそれだけだったが、今回のような愚かしい真似をするならどうしようもない。ほかの優秀な子どもを国王にし、セシルは王家から追放しよう」

 
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