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別れ

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「で、別れちゃったの?」


 電話越しのティファニーは、酷く驚いたような声を出した。

「早くない? 私がアドバイスしたの、結構最近だったと思うけど」

「ええ、でも」

 私は言った。

「なんかもう、急激に冷めちゃって」

「あらそう……。あんなに好きだったのにね」

「そうなのよねぇ。でもまあ、冷静になっちゃったら仕方がないわ」

「そうね。あなたの新しい門出を、心から祝福するわ」

「ありがとう、ティファニー」




 殿下の部屋から立ち去った私に、ウォルターが声をかけてきた。


「あ、あの」

「あら」


 足早に城を歩いていた私を、慌てた様子で彼が止めに入る。


「すみません。そう言えば、待っていらしたのですね」

「あの、何があったのですか?」


 肩で息をしながら、ウォルターは私に尋ねてきた。

「部屋の中で殿下が、呆けたような顔で棒立ちになっておりまして」

「ああ……。別れたんですの」

「えっ」


 ウォルターは絶句する。

「えっ、あの、ええっと、ど、どういう……?」

「殿下が何度も、

『別れるぞ』

 と、おっしゃっていたものですから、私は殿下に従ったまでですわ」


 唖然とするウォルターに、

「それでは、失礼いたします」

 と、優雅に一礼して馬車に乗り込む。


 両親もウォルターと同様、別れたことに対して衝撃を受けていた。


「申し訳ありません。お父様、お母様」

 私は2人に謝罪する。

「せっかくの縁談を台無しにしてしまって」


「そ、そう……」

「な、なぜ急にそんな話になったんだ?」


「急に、ではないのです。もともと殿下から何度かその申し出があったので」


「そうか……」

「それは、まあ」


 2人は顔を見合わせた。


「残念だったわね」

「ああ。でも、気にするな。いつかは良い人がきっと出来るからな」


「叱らないのですか?」


「何を言う。そもそも、大人が勝手に決めた婚約なのだから、心変わりして当然だろう」

「あなたにも殿下にも、本当に悪いことをしたわね。ごめんなさい」


 お父様とお母様は、本当に私を大切にしてくれているのね。


 少し泣きそうになったが、後ろに控えていた満面の笑みのフィルが視界にちらついて、涙は引っ込んでしまった。
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