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第5章

勝敗

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「やったじゃないの、エマ」

「あなた、なかなかやるわね。気の弱い面倒なタイプかと思ってたけど、意外と言えるじゃない」


 キャシーが教室を出ていった後。


「デートですって!?」

「あなた、やっぱり殿下を独り占めしようとしているんですね! 最低」

 と、私はキャシーの取り巻きたちに詰め寄られたが、

「で? 何が悪いの? この子、公爵家の人間なのよ。殿下の交流相手に最適な身分よ。あなたたちとは違って」

 というベラの言葉と、

「それより、自分の立場のことをもうちょっと考え直してみたら? 誰の下につくかはあなたたちの自由だけど。自分が神輿を担いでいる人間が、さっき言ったように無断で王家の所有地に侵入するような人だってこと、自分自身の家のためにもよく理解しておくことね」

 というエレノアの言葉を聞いて、再度顔を青ざめ、


「そ、それは――」

「し、失礼します!」


 と、空き教室を飛び出していった。


 残された私たち3人は、ほっと溜息をついて顔を見合わせ、くすくすと笑い始めた。


 エレノアとベラに褒められ、私は苦笑する。


「あんなはっきり言って良かったのかしら? 今思うと、言い過ぎた気がしなくもないけれど」

「何言ってるのよ、エマ。相変わらず甘いわねぇ」

 と、エレノア。

「公爵令嬢として、他の子息子女にナメられないように振舞うのは、当然のことよ」

「それはわかっているんだけど。なんとなく、悪役みたいだなと思って」

「あらあら」

 ベラは鼻を鳴らす。

「悪いのは向こうじゃない。少なくとも、この国においては、彼女たちの言動は王族を侮辱していると捉えられるものよ――それに」


 彼女は手を口元に当て、高らかに笑った。


「良いじゃないの、悪役だと思われても。誰にどう見られようとも、私たちはただ自分たちのするべきことをするだけよ」

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