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第3章
写真①
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エレノアに口で負けてしまったキャシーは、その苛立ちごと私にぶつけようとする。
「私、噂に聞いたんですけど、あなたのお兄様、金髪碧眼らしいですね」
「ええ、そうですね」
嘘をつく必要もないので、私はキャシーの言葉に頷く。
「母がそうですので」
「なら、どうしてエマさんは違うんですかぁ? 全然似てませんよね」
あっ、もしかしてと、キャシーは口を両手で押さえる。
「もしかして、エマさんって……。私と一緒で――あっ、ごめんなさい! 私ったら」
その明らかにわざとな言い回しに、私は呆れた。
「キャシーさんと一緒で? 何が一緒なんですか?」
「い、いえいえ。私、エマさんに対して失礼なことを」
「失礼?」
私は首を傾げる。
「一体何が失礼なことなんですか?」
「そ、そんなこと聞かないでくださいよぉ。ねぇ? みなさん」
キャシーはわざとらしく視線をほかの令嬢たちに向ける。
彼女たちはキャシーに対し、冷たい目を送った。
「ほら、噂ですよ――エマさん、聞いてはいませんか?」
「噂?」
私はとぼける。
「一体なんの噂なんでしょうか?」
「ええっと……」
キャシーは決まり悪そうに私から視線を逸らせる。
「エマさんが、実は公爵家の人間ではないんじゃないかって。私と一緒で庶民じゃないかって。……あっ、もちろん。噂ですからね? あくまで噂ですから!」
あくまで、自分が言ったわけではないと強調するキャシー。
私は驚いたふりをし、口元を両手で隠した。
「まあ、なんて酷いことを!」
「でしょう、でしょう。酷いですよねぇ」
激しく頷くキャシー。
「みなさん、それでエマさんが殿下の婚約者候補に相応しくないなんて言うんですよぉ」
「まあ」
私は目じりを下げ、いかにも悲しんでいるふうを装う。
「キャシーさんもそう思っていらっしゃるんですね――酷いわ!」
「私、噂に聞いたんですけど、あなたのお兄様、金髪碧眼らしいですね」
「ええ、そうですね」
嘘をつく必要もないので、私はキャシーの言葉に頷く。
「母がそうですので」
「なら、どうしてエマさんは違うんですかぁ? 全然似てませんよね」
あっ、もしかしてと、キャシーは口を両手で押さえる。
「もしかして、エマさんって……。私と一緒で――あっ、ごめんなさい! 私ったら」
その明らかにわざとな言い回しに、私は呆れた。
「キャシーさんと一緒で? 何が一緒なんですか?」
「い、いえいえ。私、エマさんに対して失礼なことを」
「失礼?」
私は首を傾げる。
「一体何が失礼なことなんですか?」
「そ、そんなこと聞かないでくださいよぉ。ねぇ? みなさん」
キャシーはわざとらしく視線をほかの令嬢たちに向ける。
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「噂?」
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キャシーは決まり悪そうに私から視線を逸らせる。
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激しく頷くキャシー。
「みなさん、それでエマさんが殿下の婚約者候補に相応しくないなんて言うんですよぉ」
「まあ」
私は目じりを下げ、いかにも悲しんでいるふうを装う。
「キャシーさんもそう思っていらっしゃるんですね――酷いわ!」
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