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第1章

招待状

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 私はため息をついた。


 自室の机の上には、一通の手紙が乗っている。

 宛先は私、送ってきたのは王家から。


 内容は見るまでもなくわかっている。


 私は先日、17歳の誕生日を迎えた。

 17歳になった貴族の子息子女たちは、余程の理由がない限り、社交界デビューを果たさなければならない。


 私の両親も、兄も同様だった。


 だから私も、本日宮廷にて開かれる社交パーティに出席しなければならないのだ。


 それが、とてつもなく憂鬱だ。


 私は残念ながら相手がいないので、兄と一緒に向かう手筈となっている。


 兄と出かけるという行為自体は楽しみなのだが、如何せん私は幼少期にこっ酷く婚約者に振られた経験があり、そのせいで、彼と出会ったきっかけであるパーティが苦痛で苦痛で仕方なくなってしまったのだ。


 両親は私の意思を組んでくれ、17歳になるまでは、私をパーティやお茶会に連れ回すなんていうことはしなくなった。


 しかし、私はもう17歳。


 社交界デビューをしなければいけない年齢だ。


 私のこの「パーティ嫌い」は、よっぽどの事情なのではないか。

 でも、いつまで経ってもそんな調子じゃ両親や兄に迷惑をかけてしまう。


 そんな気持ちを行ったり来たりしているうちに、とうとうその日がやって来てしまった。


 私はため息をつく。


 ああ、行きたくない。

 本当に行きたくない。


 憂鬱だし、何より嫌悪感で吐きそうだ。


「エマお嬢様」

 私の髪をまとめているメイドのリタが話しかけてきた。

「何?」

「とてもお似合いですよ」


 彼女は強引に、私の目線を鏡に向けさせる。


 彼女は私が幼いときから従ってくれている、優秀な使用人だ。

 私とトムの例の事件当時も、彼女が私を一番に慰めてくれていた。


 そんなお姉さん的立場の良い子なのだが、どうも私を着飾らせることに命を懸けている節があった。


「素敵です、お嬢様」

「……ありがとう」


 私は、鏡に映った自分の姿を見つめる。

 リタによって磨きあげられた姿は、自分ことながら、彼女の言う通りのような気がしないでもない。


 リタのその技術力には脱帽するが、こうも綺麗にしてくれた理由が、社交パーティであるということを思い出し、私はまた気分が悪くなる。


「大丈夫ですよ、お嬢様」

 リタは私を励ます。

「なんてったって、お嬢様にはキース様がいらっしゃいますからね」

「そうね」


 私は同意した。

「お兄様がいるもの。きっと1人よりは、大丈夫なんでしょう……」


 でも、嫌なものは嫌。

 それには変わりなかった。
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