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手紙

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 その手紙には、こう書かれていた。


「やっほー☆ 

 あなたの天使リリオーネです♡


 元気にしてるかにゃあ? 

 リリオーネは今、幸せ一杯だよっ。


 あなたを捨ててお姉様の婚約者を寝取ったけど、やっぱり王子様ってス・テ・キ♡


 あなたと違って優しいし、お金持ちだし、将来性もあるし。

 お姉様から奪って正解だったわ。


 でも、あなたのことは忘れてないわよっ。


 風の噂で聞いたけど、私のこと忘れられずに苦しんでるんだって? 

 しょうがないなー。


 優しい私が、ユージーンのこと慰めてア・ゲ・ル♡

 〇月×日の△時に、私の家まで迎えに来て。

 手土産とお金、持ってきてね。

 
 手土産はもちろん、私と殿下の噂を止めてくることだよっ。

 当然だよね。

 だってお姉様が、その元凶に決まってるんだから。


 恋人(笑)のお姉様がしでかしたことは、あなたが尻拭いするのよ。


 これは、可愛い天使からの命令!

 絶対絶対、ぜーったい守ってくるように!


 じゃ、よろしくねー。

 ちゃんとしてくれたら、良いことしてあげるからね♡


 PS あっ、もちろんお姉様には内緒だよ。お姉様、悲しんじゃうかもしれないから(笑)」


 ……以上。


「……うん、あの」


 とりあえず、ツッコミどころが多過ぎる。


 私は手紙をユージーンに返した。

「いらないよ」

「私もいらないわ」


 しばらく、私たちは黙ってその劇物を押しつけあっていた。


 やがて諦めたのか、ユージーンは渋々手紙を受け取る。


「……なんなんだ、君の妹は」

「私が聞きたいわよ」


 私は咳払いして、馬鹿みたいな手紙の分析をする。


「……要するに、

『私は幸せ。だから不幸なあなたに、私の幸せを分けてあげる♡ その代わり、私たちが生きやすい環境づくりをよろしく』

 ってことかしら」


 細かいところもあるが、だいたいこんな感じだろう。

 
 あのアホに将来性があるようには見えないし、彼女の文章が絶妙にキモいのはとりあえず置いておく。

「その変な語尾辞めてくれよ……」


 ユージーンは、完全に参っていた。

「それより、なんでこの女は僕に金をせびられているんだ?」


「殿下と浮気をした罰で、両親がリリオーネに対するお小遣いをなしにしたのよ」


 私は念のため、盗まれないように自分のお金を金庫に入れている。

 両親も同じようにしているので、現在彼女は自分で使えるお金を手に入れられる状況にない。


「それで僕にって……。ふざけてるのか?」

「自分の親族だけど、ふざけてるんじゃなくて多分頭がおかしいんだと思う。一度、両親に頼んで更生施設に連れて行ってもらおうかしら」

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