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第1章

呼び出し

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 ――が。

 悪い予感は、どんどんと現実的なものになっていく。


 それからすぐに、私たちの教室へ村長が慌ただしくやってきた。


「先生、今日休みの者はいるか?」

「ええっと」


 女性教師はキョロキョロとクラス中を見渡した。

「いないと思いますけど」

「そうか――では全員、授業を辞めて私の家に来てくれ」


「全員?」

「どういうこと?」


 クラスは一斉にざわつき始める。


「もしかして、今朝の――」

「だから言ったろ。貴族様が来てるって」

「でも、貴族様がなんの用なわけ?」

「さあ、わかんない」


「ちょっと待ってくれ――ああ、すみません、はい」

 教室の外で、村長が偉い人と話している。

「すまん、訂正だ――女子生徒のみ、私の家に来てくれ。16歳の子だけだ」


「えー」

「女子、ずっるー」

 なんて男子が騒いでいる中。


 女の子たちの心の中は、きっと1つだった。


 もしかすると、あの花嫁探しの貴族がこの村に来てるの?




 いそいそと、女子生徒たちのうち、16歳の者は村長の家へと向かう。


 私は年長に隠れて過ごそうと思ったが、

「何してるの、エミリー」

「あなたも16歳でしょ」

 と、友人に引っ張られた。


「もう、エミリーったら恥ずかしがり屋ね」

「でもこれはチャンスなのよ。貴族の妻になれば、きっと幸せに暮らしていけるわ」

「こんな退屈な生活から抜け出す機会かもしれないのよ」


 みんなは、貴族社会のなんたるかをわかっていない。

 あそこは魔窟だ。


 貴族たちの欲望渦巻く、恐ろしい場所。


 あんなところで生きるくらいなら、死んだ方がましというくらいに。


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