前世でこっぴどく振られた相手に、今世ではなぜか求婚されています ~番とか、急にそんなこと言われても困るんですが~

小倉みち

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第1章

ベネット公

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 学校でも、話は「彼」でもちきりだった。


 女子生徒たちは、「ローレン・ベネット」という貴公子がどんな人間なのか、自分たちの妄想で話し合っていた。


「絶対イケメンじゃない? だって、貴族なんだもの」

「いやいや、200歳越えなんでしょ? おじいちゃんじゃん」

「でも、普通の人間とは違うわ。龍の血を引いてるんだから」

「ひいおばあちゃんが言ってたんだけど、王都で昔彼に会ったことがあるんだって」

「へぇ」

「どんなのだった?」

「遠目でしか見えなかったらしいんだけど、凄くかっこよかったんだって」

「嘘ぉ」

「本当だってば」


 男子生徒たちは、少しどうでもよさげな顔で、しかし耳はしっかりと女子生徒たちの方に向いている。


 彼らの中で数人、恋をしている者がいる。


 もし、彼女が「ローレン・ベネット」なんていう得体のしれない男のものになってしまったら――。


 この国じゃ女性はたくさんいるから、可能性としてはとても低い。

 だけど、心配で仕方がないのだろう。


 子どもたちにとって。

 掲示板に貼られていたあの紙は、これ以上ないくらいに魅力的な会話のネタだった。


 その騒がしさの理由を知っていた先生は、教室につくなり、「彼」の話をし始めた。


「『番』って言葉、知ってる?」


 最近結婚したばかりの彼女は、そう言って黒板に「番」という文字を書く。


「私たち普通の人間にはない価値観よ――例えば、今話題のベネット公」


 彼の名前が飛び出た途端、少し騒めく生徒たち。

「主に、幻獣を先祖に持つ家系で用いられる考えなの。ベネット公は、原始の龍の血が流れている。番というのは、2つのものが1組になること。ベネット公がいて初めて、その番が存在する。簡単に言えば、『運命の相手』ってわけ」

「「「へぇ」」」


 何人かの生徒が感心した。


「じゃあ」

 1人の女子生徒が質問する。

「そのベネット公は、今『運命の相手』を探してるってこと?」

「ええ、そうよ」


 女性教師は頷いた。

「その運命の相手を、国中から見つけようとしてるの」

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