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第1章
掲示板②
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友人たちに連れていかれた先は、村の掲示板だった。
そこには、村の様々な情報が載っている。
しかし基本的には、いついつ定例会を開くとか、今度こういう村の条例を作るとか、誰それが村を出るから送別会を日取りを決めたいだとか、その程度のことしか書いていない。
この村は、小さくて閉鎖的な空間。
外の情報など、ほとんど入ってこない。
はずだ。
「見て、これ!」
友人たちが興奮していたわけは、その村のためだけに設置された掲示板に、外の情報が載っていたことにあるらしい。
そして、その情報を見るためだけに、村のほとんどの女性たちが掲示板の周辺に集まってきている。
その掲示物の内容を呼んだ私は、血の気が引いた。
「ローレン・ベネット公が、結婚相手を全国から募集」
ローレン・ベネット。
聞いたことがある、というか、かつての私が何度も心の中で唱えた名前。
前世の私の、黒歴史の温床。
……いや、落ち着け。
落ち着いて、私。
確かに私は、彼が好きだった。
愛していた。
だけど、今は違う。
あのころのことはきっちりと反省して、彼のことはきっぱりと諦めた。
もう、ローレンに対してはなんの感情も沸いていない。
だから、大丈夫。
「ローレン・ベネットって誰?」
「知らないの?」
村の女性たちが、キャーキャー騒いでいる。
「この国の公爵様よ。噂によると、もう200年も生きておられるらしいわ」
「まあ、人間じゃないの?」
「なんか、龍の血? とかが混じっている家系らしくて、その影響で長生きなんだって」
「結婚相手を全国から募集ってことは、私ももしかしたら公爵夫人になれるってこと? 200歳以上ってことは、大抵の女はピチピチになるし」
「馬鹿。あんた、結婚してるじゃないの。ほらここに、『生娘』って条件が書いてあるわよ」
「あらやだ、残念」
そこには、村の様々な情報が載っている。
しかし基本的には、いついつ定例会を開くとか、今度こういう村の条例を作るとか、誰それが村を出るから送別会を日取りを決めたいだとか、その程度のことしか書いていない。
この村は、小さくて閉鎖的な空間。
外の情報など、ほとんど入ってこない。
はずだ。
「見て、これ!」
友人たちが興奮していたわけは、その村のためだけに設置された掲示板に、外の情報が載っていたことにあるらしい。
そして、その情報を見るためだけに、村のほとんどの女性たちが掲示板の周辺に集まってきている。
その掲示物の内容を呼んだ私は、血の気が引いた。
「ローレン・ベネット公が、結婚相手を全国から募集」
ローレン・ベネット。
聞いたことがある、というか、かつての私が何度も心の中で唱えた名前。
前世の私の、黒歴史の温床。
……いや、落ち着け。
落ち着いて、私。
確かに私は、彼が好きだった。
愛していた。
だけど、今は違う。
あのころのことはきっちりと反省して、彼のことはきっぱりと諦めた。
もう、ローレンに対してはなんの感情も沸いていない。
だから、大丈夫。
「ローレン・ベネットって誰?」
「知らないの?」
村の女性たちが、キャーキャー騒いでいる。
「この国の公爵様よ。噂によると、もう200年も生きておられるらしいわ」
「まあ、人間じゃないの?」
「なんか、龍の血? とかが混じっている家系らしくて、その影響で長生きなんだって」
「結婚相手を全国から募集ってことは、私ももしかしたら公爵夫人になれるってこと? 200歳以上ってことは、大抵の女はピチピチになるし」
「馬鹿。あんた、結婚してるじゃないの。ほらここに、『生娘』って条件が書いてあるわよ」
「あらやだ、残念」
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