17年もの間家族に虐められる悲劇のヒロインに転生しましたが、王子様が来るまで待てるわけがない

小倉みち

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第1章

状況

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 状況を整理しよう。


 私はこの3つの名前に既視感を覚えている。

 それは、とあるネット小説のキャラクターの名前と全く同じだ。


 「セシリア」は主人公、「エリーズ」は主人公の実母、「アミーナ」は屋敷のメイドで、かつ「エリーズ」の親友。

 なぜこんなことを覚えているのかというと、私が死ぬ直前に呼んでいたのがこの『不遇な少女は第三王子に見初められて』というネット小説で――。


 あっ、いや。

 別に気晴らしに呼んでいただけだから。


 通勤時間にちょうど良い作品だったから、目を通していただけ。


 別にそれだけだ。


 だから決して、ネット小説を読みふけっていたせいで横から来るトラックに気づかずに撥ねられたなんていう無様な最期を送ったわけでは――。


 いや、私の死因はどうでも良い。

 今大事なのは、私を取り巻く現状についてだ。


 その「セシリア」という名前から察するに、私は恐らくこの小説の主人公に転生したのだろう。


 私はくすんだ窓に映る自分の姿を目を細めて確認する。


 雪のような銀髪に、アイスブルーの大きな瞳。

 確かに小説の主人公の姿と一致している。


 前世の平平凡凡な私にしてみれば、願ったり叶ったりの容姿なのだが。

 現実はそう甘くはない。


 小説のストーリーによると、今は庶子であるセシリアが子爵家に引き取られた冒頭部分なのだろう。


 あの私を折檻した見知らぬ男は「セシリアの実父」、奥様と呼ばれていた口うるさい女は「セシリアの義母」。


 そいつらと義理の姉を加えた3人に、私はこれから17年間虐げられることになる。

 そうして20歳になったある日、運命の相手である第三王子と出会うことになるのだが――。


 いや、無理だな、うん。

 普通に無理だわ。


 
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