17年もの間家族に虐められる悲劇のヒロインに転生しましたが、王子様が来るまで待てるわけがない

 よくあるネット小説の1つ、『不遇な少女は第三王子に見初められて』という作品に転生してしまった子爵令嬢セシリア。

 
 容姿に恵まれて喜ぶのもつかの間。

 彼女は、「セシリア」の苦難を思い出す。


 小説の主人公セシリアは、義理の母と姉に散々虐められる。

 父親からも娘としてではなく、使用人と同等の扱いを受け続ける。

 そうして生まれてから17年もの間苦しみ続けたセシリアは、ある日町でお忍びに来ていた第三王子と出会う。

 傲慢で偉そうだが実は優しい彼に一目惚れされたセシリアは、彼によって真実の愛を知っていく――。


 というストーリーなのだが。


 セシリアにとって問題だったのは、その第三王子に見初められるためには17年も苦しめられなければならないということ。


 そんなに長い間虐められるなんて、平凡な人生を送ってきた彼女には当然耐えられない。

 確かに第三王子との結婚は魅力的だが、だからと言って17年苦しめ続けられるのはまっぴらごめん。


 第三王子と目先の幸せを天秤にかけ、後者を取った彼女は、小説の主人公という役割を捨てて逃亡することにした。
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