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頼み ~ランス視点~
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陛下のせっかくの申し出に、俺はすぐに返事が出来なかった。
貴族になるということがどういうことなのか、俺の中でうまく形になっていない。
俺自身が、うまくそれを捉えきれていない。
「……駄目か」
落胆する陛下。
「ち、違います」
俺は慌てて首を振った。
「そういうことじゃないんです。そういうことじゃなくて……」
なんて言えば良いんだろうか。
「その。俺は、公爵家に居候させてもらっている身ですし。確かに早く独立して、あの方たちに恩返しをしたいと思っています。そのために、貴族になるっていう選択肢を受け入れる気はあります。ですけど」
俺は一呼吸置く。
「貴族というのが、俺の中で全然イメージ湧いてなくて。なんかこう、未だによくわかっていないものっていうか。よく知らないものを貰っても、俺がうまくその立場を使いこなす未来が想像できないんです。それに、俺ごときが貴族っていう気持ちもありますし。俺、まだ学生ですし。自分のこともままならないのに、責任ある立場になっても、力不足となる可能性が高いです。もしいただくとしても、まだ早い気がします」
俺の説明はまどろっこしく、下手くそだった。
うまく俺の気持ちを伝えられたかどうかはわからないが、それでも、
「ふむ」
と、陛下は顎に手を当てて、何かを考える仕草をした。
「つまり、お前は」
陛下が口を開く。
「貴族になる自信がないということだな」
つまりは、そういうことになるのだろうか。
俺はゆっくりと頷く。
「まあ、お前のように責任を感じながら『貴族』をやっている者など、ほとんどいないとか、言いたいことは山ほどあるが――では、言葉を変えよう」
陛下は、真っすぐ俺の顔を見据えた。
「お前を貴族したいと考えている理由は、もう1つある。お前が貴族となり、我が姪のシャーロットを守ってやってほしいのだ」
貴族になるということがどういうことなのか、俺の中でうまく形になっていない。
俺自身が、うまくそれを捉えきれていない。
「……駄目か」
落胆する陛下。
「ち、違います」
俺は慌てて首を振った。
「そういうことじゃないんです。そういうことじゃなくて……」
なんて言えば良いんだろうか。
「その。俺は、公爵家に居候させてもらっている身ですし。確かに早く独立して、あの方たちに恩返しをしたいと思っています。そのために、貴族になるっていう選択肢を受け入れる気はあります。ですけど」
俺は一呼吸置く。
「貴族というのが、俺の中で全然イメージ湧いてなくて。なんかこう、未だによくわかっていないものっていうか。よく知らないものを貰っても、俺がうまくその立場を使いこなす未来が想像できないんです。それに、俺ごときが貴族っていう気持ちもありますし。俺、まだ学生ですし。自分のこともままならないのに、責任ある立場になっても、力不足となる可能性が高いです。もしいただくとしても、まだ早い気がします」
俺の説明はまどろっこしく、下手くそだった。
うまく俺の気持ちを伝えられたかどうかはわからないが、それでも、
「ふむ」
と、陛下は顎に手を当てて、何かを考える仕草をした。
「つまり、お前は」
陛下が口を開く。
「貴族になる自信がないということだな」
つまりは、そういうことになるのだろうか。
俺はゆっくりと頷く。
「まあ、お前のように責任を感じながら『貴族』をやっている者など、ほとんどいないとか、言いたいことは山ほどあるが――では、言葉を変えよう」
陛下は、真っすぐ俺の顔を見据えた。
「お前を貴族したいと考えている理由は、もう1つある。お前が貴族となり、我が姪のシャーロットを守ってやってほしいのだ」
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