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帰り②
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ランスは、まるで自分のことのように憤っていた。
「自分の婚約者を裏切っておきながら逆切れして暴力を振るい、あまつさえ人前で恥をかかせようとするなんて」
彼がかなり怒っていてくれるおかげで、私は少し冷静になれた。
ぐわぁっと溢れかえっていたありとあらゆる負の感情が、ゆっくりと鎮静化されていく。
「……それに、そのジニーだっけ?」
「ええ」
「そのジニーという令嬢も悪いだろ。わざわざシャーロットに言いに来るなんて」
ランスはその怒りに任せて言う。
「俺に任せてくれ。ちゃんとダンスを覚えて、俺も舞踏会に参加する――もともとリアムが断ってきたらって話だっただろ? だけど、あいつがそうやって君にあくまで害を成そうとするなら、俺は君の相手役として参加させてもらうよ。君を、『婚約者に捨てられた人間』として恥をかかせたりなんてしない」
「良いの?」
「当たり前だ」
ランスは頷いた。
「僕と君は、その、幼馴染だろ?」
彼は少し照れたように笑う。
「そんな君が酷い目に遭おうとしているのに、助けてあげない人間が一体どこにいるんだ?」
私は、純粋に嬉しかった。
彼は私のことを覚えていないのに、それでもなお、私を幼馴染として見てくれ、助けようとしてくれる。
「ありがとう。嬉しい」
私はその嬉しさをめいいっぱい伝えようと、笑顔を浮かべる。
するとなぜか、
「……」
ランスは少し顔を赤らめて、私から視線を逸らした。
「自分の婚約者を裏切っておきながら逆切れして暴力を振るい、あまつさえ人前で恥をかかせようとするなんて」
彼がかなり怒っていてくれるおかげで、私は少し冷静になれた。
ぐわぁっと溢れかえっていたありとあらゆる負の感情が、ゆっくりと鎮静化されていく。
「……それに、そのジニーだっけ?」
「ええ」
「そのジニーという令嬢も悪いだろ。わざわざシャーロットに言いに来るなんて」
ランスはその怒りに任せて言う。
「俺に任せてくれ。ちゃんとダンスを覚えて、俺も舞踏会に参加する――もともとリアムが断ってきたらって話だっただろ? だけど、あいつがそうやって君にあくまで害を成そうとするなら、俺は君の相手役として参加させてもらうよ。君を、『婚約者に捨てられた人間』として恥をかかせたりなんてしない」
「良いの?」
「当たり前だ」
ランスは頷いた。
「僕と君は、その、幼馴染だろ?」
彼は少し照れたように笑う。
「そんな君が酷い目に遭おうとしているのに、助けてあげない人間が一体どこにいるんだ?」
私は、純粋に嬉しかった。
彼は私のことを覚えていないのに、それでもなお、私を幼馴染として見てくれ、助けようとしてくれる。
「ありがとう。嬉しい」
私はその嬉しさをめいいっぱい伝えようと、笑顔を浮かべる。
するとなぜか、
「……」
ランスは少し顔を赤らめて、私から視線を逸らした。
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