行方不明だった元婚約者が戻ってきたので、浮気三昧な現婚約者を捨てることにしました

発覚

　私たち3人はそれぞれ別々に、生徒指導室に呼ばれた。


　まずは私からだった。

「何があったんだ？」

　生徒指導の教師に尋ねられる。


「シャーロット、君は真面目な生徒だ。だからこそ、なぜ君はリアムに殴られるようなことになったのか、私には今1つ状況が読めない」


　私はなんて言うか少し迷う。

　しかし、ここで嘘をついても仕方がないので、全てを伝えることにした。


「私は、リアムに別れを告げました」

「別れを？」

「ええ。それで逆上されて」

「だが、」


　恋愛のいざこざだとは思っていなかったのか、それとも私の口からそのような話が出ると考えていなかったのか、教師は至極気まずそうな顔をしている。


「君たちは確か、両親の決めた許嫁だったのでは？」

「はい、そうなんですがーー先生はご存知でしょうか？」

「何をだ？」

「リアムとジニー様の関係を」

「……」


　男性教師は黙り込んでしまった。


　否定はしない。

　それが答えだ。


「私はずっと、リアムを注意してきました。私とリアムは婚約者で、だからこそ彼のその、他の女性と一緒に過ごすという行為が契約違反に値するということを、彼に理解してもらいたかったのです」

「……そうか」

「ですが、私がいくら注意しても、彼は取り合わないどころか、ああやって私を侮辱するばかり。我慢の限界が来て、つい私は彼に別れを告げてしまいました」


　男性教師は腕を組み、しばし熟考しているようだった。


　しばらくして、口を開く。

「君からの話は以上か？」

「はい」

「それと、今回のことは保護者にも伝えなければならない。シャーロット、君が言ったことを全て、それぞれの父兄に伝えるが、それで良いか？」

「……はい」


　私は頷いた。


　もう、仕方がない。


　リアムは、私を殴ろうとしたのだ。

　そんな彼と、どうして今後もやっていけると思うだろうか。


　もう、無理だ。


　私はもう、リアムとジニーの面倒を見きれない。


　だから、別れようと思う。

　お父様とお母様に、リアムとの不仲の件を伝えよう。


「わかった。では、話は以上だ」

「はい。失礼いたしました」


　私は生徒指導教員に一礼し、部屋を出る。


　廊下を出たが、誰もいない。

　学校側の配慮だろうか、私がリアムとジニーと顔を合わせないように、2人を他の教室で待機させているようだった。


　私は一安心し、自分の通学鞄を持って廊下を歩く。


　心は相変わらず重苦しいままだったが、少なくとも今朝感じていた憂鬱さは少し軽減された気がした。