黒幕王女は忙しい

 第一王女リリアンヌは、転生者だった。

 普通のOLとして生きていた彼女は、不慮の事故で命を落とし、気づけば自分の好きだった乙女ゲームの世界に転生していた。


 転生してから十数年間は、王女としてそれなりに幸せに過ごしていたが。


 最近、とある悩みが出来た。


 それは、自分の兄であるローガン第一王子の所業である。


 彼には婚約者である公爵令嬢がいるはずなのに、最近それ以外の平民の女性にお熱。

 その平民は、自分こそが未来の王妃だと宣い、学園内を支配しようとしていた。


 それとは対照的に、公爵令嬢は怒ることも諭すこともせず、2人を放置している。

 そんな彼女の周りには幾人もの貴公子がおり、半ば逆ハーレムと化している。


 兄と公爵令嬢の関係は既に破綻しており、再起不能となっている。

 しかしなぜか2人は正式に婚約破棄することもなく、2人の揉め事は貴族の子息子女たちを巻き込んで、大きな騒動となっていた。


 このままだと真っ二つに割れる貴族たち。

 平民の女性を王妃に迎え入れるわけにもいかないし、そもそもあんなふうな兄が次期国王に相応しいわけがない。


 それに、もしこの状況を他国に知られてしまえば――。


 ヤバい。

 確実に、ヤバい。


 ゲームと同じ世界なのに、まるで違うシナリオでストーリーが進んでいく。


 その状況に危機感を覚えた彼女は、地獄のような学園に飛び入り入学し、自分が独自に雇った生徒や教師とともに国や秩序を守るため、学園で暗躍することになる。

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