裏切られた公爵令嬢は、冒険者として自由に生きる

第3章

悩み

　揉め事は、あくまで2人の問題だ。


　なんで揉めたのか、なぜ殴り合いをしたのか。


　私は第三者であり、2人の諍いに平然と首を突っ込めるほどのお節介でもない。


　わざわざお節介ぶってゼロとパーシーの間に入り、仲直りさせるなんて芸当、私に出来るはずもなく。


　2人が何もないと言うなら、と。

　何事もなかったかのように過ごすしか出来なかった。


　というか、そもそも2人、仲良くないしね。


　ゼロは彼の食事と引き換えにして、無理やりパーティに私が引きずり込んだ。

　パーシーは、一応向こうが悪いって言うのもあるんだけど、結果として、私が強制的に期間限定でパーティ要員に仕立てあげた。


　私と彼ら2人の関係性についてはそれくらいだし、そんな私を抜いた2人の関係など、どう考えても良いわけない。


　ただの赤の他人。

　私がいなきゃ、出会うことすらなかった2人。


　もともと仲が良くなかった。

　だから、仲直りという概念さえない。


　それが気楽である反面、やりにくいのは事実だ。


　なんかこう、今のところ。

　今の時点で、一応私はパーティのリーダー的存在となっている。

　ほとんどゼロが引っ張ってくれちゃってるけど。


　パーシーはあくまで期間限定要員。

　だからあの2人の仲の悪さに、私はわざわざ足を突っ込む必要などない。

　いつかいなくなる人間同士の揉め事の仲裁など、面倒極まりない事柄だ。


　しかし、放置するのもどうかと思う。

　放置して仲が拗れ、最終的に問題は全部こっちにやってくるし。


　第一、「私」はこの世界じゃ存在していないようなものだけど。

　「私」が使わせてもらっている「ヴァイオレット」には、元の持ち主がいるし。


　彼女がいつ戻ってくるかわからない手前、いつどうなっても良いよう。

　彼女にとって過ごしやすい、最善の環境は作っておくべきか。