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第3章

喧嘩

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 私は一瞬どうすれば良いのか迷ったあと、私は注射器をチェストの上に置いて2人を止めにかかる。

「何してんの? 本当」


 私が現れたからか、それとももう既に決着はついていたのか、私に制止された2人はスムーズに殴り合いをストップした。

「何?」


 眼前で男子同士の喧嘩を目撃したのなんて、前世で中学校のクラスメイトが殴り合っていた以来だ。

 その当時はほかの生徒と一緒になって、

「何あれ?」

「怖―い」

 などと言い合っていた。


 当然、昔から私は男子と関わりがなかったので、ただのクラスメイトでしかないあの2人の喧嘩を止めようなんてことはこれっぽっちも考えていなかった。

 誰かが止めてくれるだろうと考えて、結局先生が2人がかりでどうにかするまで何もしなかったのだ。


 あれ、なんで喧嘩したんだっけ?

 確か、どっちかが片方の好きな子の悪口を言われてブチ切れたみたいな感じだったと思うけど。


 けどまあ、今その話は関係ない。

 問題は目の前にあった。


 なぜ2人が殴り合っていたのか、だ。


「なんで?」

 私は戸惑いの声をあげる。


 今まで、喧嘩をあまり目撃してこなかったという幸せな人生を歩んでいたからか。


 私には、喧嘩を止めるスキルが1つも身についていなかった。

「えっ、なんで?」


 私はただ、機嫌の悪い2人の間で右往左往しているだけだ。

「……なんでもない」


 最初に言葉を発したのは、ゼロだった。

「なんでもない?」

「なんでもねぇよ」

「そうです」

 パーシーは固い顔で追随する。

「本当に何もないので、気にしないでください」


 いや、何もないわけあるか。


 そうツッコミを入れたくなったが、2人の圧に気圧されて、私は何も言えなくなってしまった。


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