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第3章

酒場

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 お姉さんが戻って来るまでの間、ゼロはテーブルの上に置いてあったメニューを開く。


「何か飲むか?」

「そんなこと言ってる場合?」

 私は言った。

「お酒飲んでる場合じゃないでしょ」

「そう言うなよ。変に警戒するより、堂々としてた方が安全だ」

「でも」

「焦ってても何も始まんねぇよ――何か飲むか、それとも食べるのか、どっちだ?」

「うーん」


 まあ、ゼロの言うことも一理あるけど。

 実は飲みたいからとか、そんなんじゃないよね?


「俺はヴァンパイアだぜ」

 ゼロは言った。

「俺は酒より食事より、何より血が一番なんだ」


 彼は全員に見えやすいようメニューをテーブルに広げる。

 私たちはそれを眺めた。


「うーん」

「何が良いんだ? 今日は俺が奢ってやる」

「ありがとう」


 メニューは、ありきたりなものだった。


 というか、やっぱりここはゲームの世界なのかもしれない。


 日本語で書かれたメニュー表。

 明らかに名前やら雰囲気は海外ふうなのに、話している言語や使われている言葉はしっかりと日本語。


 それに、メニューの内容もそうだ。


 オムライスにカレーライス、ナポリタン、ハンバーグ、サンドイッチ……etc.


 飲み物はコーラ、オレンジジュース、りんごジュース、メロンソーダ、それにお酒。


 私の住んでいた国じゃ馴染み深いものばかりだ。


「ねえ、パーシー。何か食べる?」

 私は彼に視線を向け、彼がさっきから黙ったままなのを思い出した。

「……」

「あっ、ごめんごめん。もう喋って良いよ」


 パーシーは不服そうな顔をしながらも、メニューから「オムライス」を選ぶ。

「じゃあ私はナポリタンにするわ」

「飲み物は?」

「コーラで」

「……僕はりんごジュース」


 あら、ちょっと可愛い。


 メニューを全員が決めたちょうど良いタイミングで、さっきの綺麗なお姉さんが戻ってきた。

 小太りの中年女性も一緒だ。


「ゼロ! 店長連れて来たわよ! さっきの話、もうちょっと詳しく教えてちょうだい」

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