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第4章

神社

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  何回か行ったことのある神社へ到着した。


 私の燃えてしまった家も、この神社に近いところに位置している。


 小さい頃、親によく連れていってもらったなあ、なんて思い出がよみがえってしまい、なんだか涙が出てきた。
 

  両親の今の居場所よりは都会であるが、どちらかと言うと田舎に近いこの街には、ここがかつて村であった頃、農民たちが心底大切にしてきた鎮守の森があった。

 日本史の教科書によると、その神社も、神社合祀令とやらで呆気なく潰されてしまったらしい。それを憂いた今の住人が、この神社を作ったと言う。
  

 随分とロマンのある話であるが、私にとってはこの神社、そこまで愛情を注ぐ対象ではない。
  

 辛うじて毎年お参りしていたものの、特に思い入れがあるわけでもない、近所の建築物という認識。


 しかしながら雛子の方では、かなり親しみのある神社らしい。

 だからこうして、わざわざ除夜の鐘を聞きに行くのだろう。
 

 いや待て。

 除夜の鐘? 

 
 除夜の鐘って、お寺じゃなかったっけ?


「あそこ、同じ境内に寺と神社両方あるのよ」
 
 と、奥さんが言った。
 

 ああ、そうか。

 そうでもないと、おかしいものね。
  

 もちろん田舎である。

 有名な神社でもあるまいし、この地域には、熱心な年中行事信者なぞ余りいない。
  

 寂れた社に、ぽつぽつと跳ねた絵の具みたいな人たちが小さく立っている。


 変に明るい街灯が、斑に地面を照らしている。

 月光が真っ直ぐに鳥居の朱色を際立たせ、氷のような気体がピリピリと肌を焼きつけていた。
  

 寒。


 時計を見る。

 まだ午前には程遠い。


「おっ、相変わらず早いねー。あんたら」
  

 突然声をかけられる。


 そっちの方を見ると、青っぽくてぼんやりした光に包まれた白い人が、ぬっと立っていた。
  

 何、幽霊?
  

 身構えるが、雛子ファミリーは至って普通な様子。


「久しぶりだねー。神主さん。あけましておめでとう」

「いやいや、まだ早いっての(笑)」
  
 店主の言葉により、ようやく彼がこの神社の主であるということに気づいた。

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