夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~

 元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。


 激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。

 貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。


 しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。


 ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。

 ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。


 ――そこで見たものは。


 ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。


「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」

「ティアナに悪いから」

「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」


 そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。

 ショックだった。


 ずっと信じてきた夫と親友の不貞。


 しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。


 私さえいなければ。

 私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。


 ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。


 だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。

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