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第1章

事の発端②

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 ニナと王子が出会ったのは、いつ頃だったのか。


 少なくとも彼女の周囲に彼の側近たちが集まったあたりなのではないかと私は踏んでいる。


 いくら両親から冷遇されようが、私は筆頭公爵家の長女。

 先祖に臣籍降下した王子を祖に持つ、由緒正しき家柄の娘。


 そんな私には、生まれたころから第一王子妃という立場が用意されていた。

 父は可愛い可愛いニナをその座に収めたかったようだが、元平民の少女にそこまではさせまいと親族一同が頑張った結果、以前の約束通り私に決まった。


 婚約式の日、不服そうな父とニナの顔がいつまでも脳裏に残っている。

 あろうことか、あの2人はこの婚約を不服とし、体調不良だと理由をつけて婚約式に出席することはなかった。


 その件に関しては王族からの不評を買ったのだが――まあその話は良い。


 私としても、第一王子との婚約は有難かった。

 貴族として生きていくしかない私にとって、あの公爵家から逃れることは不可能に等しい。


 そんな中、第一王子の妃と言えば将来のこの国一番の権力者になるということ。


 そうなれば、あの連中だって私をないがしろにし続けるわけにはいかない。

 王族に対する悪意は反逆罪に値するからだ。


 婚約が決まった10歳の頃から、私は王城で妃教育を受けることになった。

 王子の婚約者として、第一王子との交流の場を設けられたことも何度か。


 しかし、私は王子と恋愛関係になろうとは微塵も思わなかった。

 
 王と王妃の関係は、普通の夫婦とは違う。

 私たちの間には、国が重くのしかかっているのだ。


 2人の夫婦として以前に、私たちは将来共同して政治を行うパートナーだった。


 互いにそれを良く理解していた私たちは、お互いに親密な関係となるよう努力しつつ、しかし決してそれに溺れないよう努めてきた。


 だがどうやら、それが仇になったらしい。


 恋だの愛だのに飢えていた王子は、学園で1人の少女に目を奪われた。

 恋愛に関して純粋な王子は、その少女にすっかり溺れてしまうことになる。

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