好きだから虐めてしまったなんて言われても、今更すぎて困るんですけど

屋敷

　久しぶりに現れた私を、セオドアの両親は驚いた様子で迎え入れてくれた。


「まあ、久しぶりね」

「2人が一緒だなんて珍しい」


　この世でトップクラスに性格の悪いセオドアが、なぜこの2人から生まれたのだろうと驚くぐらい善良な人たちだ。

　セオドアが地雷になった幼少期より、私はこの2人とほとんど顔を合わせることがなくなってしまったけれど。

　それでも今、特にこのお2人に恨みを抱いていないのは、この人の良さにある。


　だからこそ、セオドアの悪行を伝えるのが心苦しくて今までずっと黙ったままだったのだ。


「お久しぶりですわ、お2人とも」

「お久しぶりです」


　私たち兄妹はきちんとお辞儀をした。


「本日はセオドアに会いに来たんです。今日はいらっしゃると伺ったのですけれど」


「ええ、ええ。もちろんいるわ」

　母親はとても嬉しそうだった。


　少しホッとしているふうにも見える。


「セオドアに会いに来たのね。良かったわ」

「君は恥ずかしがり屋だそうだから、なかなかセオドアに会いに来てくれなかったものな」

　
　父親の言うその「恥ずかしがり屋」とは、一体どこで誰に聞いたのだろうか。

　身近なところで言うと1人しか見当たらないが、あの男が私をそう表すなんて図々しいったらありゃしない。


「セオドアなら自分の部屋にいるわ。場所はわかるかしら？　案内しましょうか？」

「いえ、お気遣いなく」

　アルフレッドお兄様はそれを断った。

「自分は場所を知っているので。代わりに妹を案内します」

「まあ、そうね。あなたはセオドアと兄弟のように育ったものね」


　2人はにこにこしていた。

　これからこの2人を傷つけるかもしれないと考えると、胃が痛くなる。


「それじゃあ、あとは若い者に任せるとしよう」

「何か食べたいものがあったら遠慮なく言ってちょうだいね。美味しいケーキを料理長に作らせるわ」


　そう言って、セオドアの両親は仲睦まじくその場を去っていった。