好きだから虐めてしまったなんて言われても、今更すぎて困るんですけど

小倉みち

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理由②

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 要するに、こういうことだ。


 兄は昔から、セオドアと仲が良かった。


 いわゆる、幼馴染という存在。


 もちろんそれは知っている。


 私たちの両親とセオドアの両親は仕事上切っても切れない関係性にある。


 だからこそ4人は、今後とも公私共に交流を深める必要があると、次期当主であるアルフレッドお兄様とセオドアを出会わせたのだ。


 つまり、婚約する前まで私とセオドアはそこまで関わりがなかった。

 私は兄の幼馴染としてしかセオドアのことを見ていなかった。


「……俺たちはすぐに仲良くなった」

 お兄様は言った。

「両親からの勧めで友達になったとは言っても、そもそもの性格の部分が似通っていたんだ」


 兄が苦手なのは、そういう部分だ。


 兄はセオドアに似ている部分がある。


 だからこそ、ずっと怖かった。


「俺がお前をセオドアに紹介するよう仕向けた」


 兄は続ける。

「……なんでそんなことしたんですか?」

「セオドアに頼まれたんだ」

「セオドアに?」

「セオドアが、あいつがお前を紹介してくれと。そう言ってきた。お前と仲良くなりたいと」


 兄は、それを言葉通りに受け取った。


 そう言えば、と思い出す。


 婚約が決まったのは、兄が私をセオドアに紹介してしばらく経った頃の話だ。


 初対面に限定して言えば、私たちの仲はそこまで悪くはなかった。


 おそらく両親たちは、私たちの交流を見て政略婚約もアリなのではないかと考えたんだと思う。


「俺がきっかけなんだよ」

 兄は言う。

「俺のせいで、申し訳ないことをした。本当にすまない」


 これから剣術の稽古があることも忘れている兄は、ほとんど死にそうな顔をしていた。


 この人は人1倍正義感が強い。


 だからここまで落ち込んでいるんだろう。


「……お兄様」

 私は言った。

「お兄様は悪くありませんよ」


 幼い兄はただ、友人の願いに答えただけだ。

 まさかこうなるとは普通思わない。


「悪いのはセオドアですから。お兄様ではありません」

「だが、それだと俺の気が済まない。罪滅ぼしになるかどうかはわからないが、お前が望むなら俺はなんだってしよう。セオドアのことを事故と見せかけて殺すくらいなら俺にだって出来る」

「お兄様」


 私はため息をついた。

「それは辞めてください。バレたら面倒です」
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