好きだから虐めてしまったなんて言われても、今更すぎて困るんですけど

理解不能

　理解出来なかった。

　その文章が。


「ごめんなさい、カタリナ」

　私は言った。

「ちょっとその手紙、見せてもらえない？」

「承知いたしました」


　カタリナから渡された手紙を、私は震える手で受け取る。


　しばし中身を確認した。


　確かに、カタリナが述べていた文章と同じだ。

　一言一句何も変わらない。


　確かにセオドアから、セオドア直筆で、


「今までごめん。君のことが好きだったんだけど、どうすれば良いのかわからなくて虐めてしまった」

「やり直したい。手始めに学園に登校してくれ」


　そう書いてあった。


「はあ？」

　私は思わず暴言を吐く。

「……何言ってんのこいつ？　頭おかしいんじゃないの？」


　私はこいつに散々虐められたのだ。

　暴言や暴力の数々。

　そのせいで、私は引きこもってもう外に出られなくなってしまった。


　こいつに至っては楽しく外で友人たちと遊んでいるのに。

　加害者のこいつは幸せそうなのに。


　私はこいつのせいで、ずっと不幸だった。
　
　
　私の人生をめちゃくちゃにしたのは、ほかならぬあの男だ。


　――それなのに。


「好きだから虐めた？　やり直したい？」


　手紙で？

　それくらいのことで？


　その謝罪で、私の人生の苦しみを生み出したことに対する罪悪感をなくそうとしているのか？


　好きだった？

　それが言い訳になるとでも？

　それですべてが解決出来るとでも？


　恐怖が、どんどんと怒りに変わっていく。

　今までどうしようもなかった感情が、ふつふつと煮えたぎるマグマのように一気に溢れ出した。


「……何よ今更。こっちはあんたのせいで人生めちゃくちゃにされたんですけど！」


　私は手紙をゴミ箱に叩きつけた。


「絶対に許すわけないでしょ！　このクソ野郎！」