好きだから虐めてしまったなんて言われても、今更すぎて困るんですけど

小倉みち

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手紙

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 セオドアと最後に会話したのは一体いつだっただろうか。


 確か、学園入学前だったように思う。


 私は奴の虐めがヒートアップするのを恐れ、学園に登校するのを拒否してハンガーストライキをしていた。

 食事を取らない、何もしないでひたすら家に籠るのは非常に苦痛だったが、それでも学園に通って連中に虐められるよりは圧倒的にマシだった。


 そのころ、奴は私を説得するべく両親が送り込んできた刺客として家に現れたのだ。


 私は当然部屋から出ない。


 奴は扉をドンドンと叩く。

 たまに蹴り、向こうでゲラゲラと笑う声が聞こえる。


 私は泣きながら、それでも部屋から出なかった。


 そんな私に、

「二度と出てくるなよブス。お前なんかさっさと死ねば良いのに」

 
 ――そんな言葉を吐いてきたのだ。


 私はそれを聞いて、一安心した。

 やっぱり家から出るべきじゃないのだ、私は。


 私はみんなから嫌われている。

 1歩外に出てしまえば、私はセオドアたちに殺されてしまうかもしれない。


 それ以降、セオドアとの接触は完全に絶った。

 奴はもともと手紙も送らない質だし、私もあいつに手紙を送るなんて馬鹿な真似はしなかった。


 セオドアと両親の間でのコミュニケーションはあったかもしれないけど、少なくとも私たちの間には何もなかった。


 ここ数年は、本当に幸せだった。

 日々が凪いでいて、とても穏やか。


 私を苦しめるものなど、ほとんどなかったというのに――。


「……ルーティア?」


 私の様子を見て、心配そうに母は声をかけてきた。

「顔色が悪いわよ? 大丈夫なの?」

「……」

「そりゃそうですよ、母上。ルーティアはほとんど家に出ていないのですから、ちょっとした動きですぐに気分が悪くなるんです。病人とほとんど同じですよ」


 兄が失礼なことを言い出す。

「気分が悪いなら、すぐに部屋に戻ると良い」

 父は言った。

「無理に呼び出したりして悪かったな、ルーティア。後でカタリナに食事でも運ばせよう」

「……はい」

「ああ、手紙は持っていきなさい。せっかく筆無精のセオドアが手紙を書いてくれたんだ。きちんと返事をしなさい」


 ……やっぱり置いていけなかったか。

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