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家族会議
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――しかしまあ。
手紙を燃やして証拠隠滅すればすべてが終わるというわけにはもちろんいかなかった。
数日後、私は両親と兄に呼び出される。
執務室に入ると、開口一番父がこう言った。
「修学旅行には行かないのか?」
私はため息をついた。
家族の追及にうんざりしているわけじゃない。
ただただ、修学旅行なんていう最悪行事のことを考えたくなかったからだ。
「……行きたくありませんわ」
「そうか」
父は母に視線を向ける。
「ルーティアはこう言っているぞ」
「はぁ」
母は俯く。
「この子の気持ちは最大限に考慮したいのですが……。でも本当に良いのですか? ルーティア。一生に一度のことですよ」
「一生に一度の学園生活をもう既にふいにしておりますもの、私。それに今更顔を出したところで、ほとんど知らない人たちと箱詰めになって1ヵ月以上も過ごすだなんて。私多分、その道中で海に身を投げると思います」
「なんてことを言うんだ、お前は」
兄は私を叱った。
「だってそうなんですもの。それくらい嫌ですわ」
「……甘やかし過ぎたのかもしれないな」
父は頭を抱えた。
「ここまで人嫌いになるとは」
別に両親のせいじゃない。
悪いのはあのセオドアだ。
しかし私はどうしても真実を伝えられなかった。
「修学旅行が嫌なのはわかった。だが、最後のプロムは王城でするんだろう? それには参加出来るよな?」
「……お兄様、なぜそれを?」
もしや、カタリナが余計なことを言ったの?
「そりゃ俺は修学旅行に参加したからな。例年そんな感じのスケジュールだったはずだ。違うか?」
「ああ……」
カタリナじゃなかった。
ごめんカタリナ。
でもお兄様の余計な一言は許せない。
「それは参加してくれ」
父は言った。
「セオドアくんが1人になってしまうだろう?」
「あなたいつも彼を1人ぼっちにさせてしまっているんだから。こういうときくらい、一瞬だけでも相手をしてあげなさいな」
「……」
それが一番嫌なんだけどな。
黙り込む私に、お父様は手紙を渡した。
「なんです?」
「お前の婚約者殿からだ。修学旅行に行きたくないとお前が言い出すと思ったんだろう。催促じゃないか?」
「えっ」
私は青ざめた。
手紙を燃やして証拠隠滅すればすべてが終わるというわけにはもちろんいかなかった。
数日後、私は両親と兄に呼び出される。
執務室に入ると、開口一番父がこう言った。
「修学旅行には行かないのか?」
私はため息をついた。
家族の追及にうんざりしているわけじゃない。
ただただ、修学旅行なんていう最悪行事のことを考えたくなかったからだ。
「……行きたくありませんわ」
「そうか」
父は母に視線を向ける。
「ルーティアはこう言っているぞ」
「はぁ」
母は俯く。
「この子の気持ちは最大限に考慮したいのですが……。でも本当に良いのですか? ルーティア。一生に一度のことですよ」
「一生に一度の学園生活をもう既にふいにしておりますもの、私。それに今更顔を出したところで、ほとんど知らない人たちと箱詰めになって1ヵ月以上も過ごすだなんて。私多分、その道中で海に身を投げると思います」
「なんてことを言うんだ、お前は」
兄は私を叱った。
「だってそうなんですもの。それくらい嫌ですわ」
「……甘やかし過ぎたのかもしれないな」
父は頭を抱えた。
「ここまで人嫌いになるとは」
別に両親のせいじゃない。
悪いのはあのセオドアだ。
しかし私はどうしても真実を伝えられなかった。
「修学旅行が嫌なのはわかった。だが、最後のプロムは王城でするんだろう? それには参加出来るよな?」
「……お兄様、なぜそれを?」
もしや、カタリナが余計なことを言ったの?
「そりゃ俺は修学旅行に参加したからな。例年そんな感じのスケジュールだったはずだ。違うか?」
「ああ……」
カタリナじゃなかった。
ごめんカタリナ。
でもお兄様の余計な一言は許せない。
「それは参加してくれ」
父は言った。
「セオドアくんが1人になってしまうだろう?」
「あなたいつも彼を1人ぼっちにさせてしまっているんだから。こういうときくらい、一瞬だけでも相手をしてあげなさいな」
「……」
それが一番嫌なんだけどな。
黙り込む私に、お父様は手紙を渡した。
「なんです?」
「お前の婚約者殿からだ。修学旅行に行きたくないとお前が言い出すと思ったんだろう。催促じゃないか?」
「えっ」
私は青ざめた。
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