好きだから虐めてしまったなんて言われても、今更すぎて困るんですけど

家庭教師

　そうしてお昼頃、憂鬱な気分の私の元へ1人の客人が訪れる。


　彼は私の専属家庭教師をしてもらっているベンジャミン先生。


私は家族から、不登校でいる条件に家庭教師をつけて勉強することを命じられているのだ。


　彼――って言ってももうだいぶおじいちゃんだけど、その先生は私が幼少期の頃より面倒を見てもらっている。

　その前は兄の家庭教師もしていたらしく、我が公爵家からの信頼が厚い方だ。


　結構な年配の先生ではあるが、考え方も柔軟で穏やか。

　良く聞くその辺の老害みたいな人間じゃなく、私の不登校にも理解を示し、こうして授業をしに来てくれている。


　正直年齢の近い人や若かったり、40代くらいの現役バリバリ層は怖いので、長年交流のあるベンジャミン先生がいてくれて本当に良かった。


「ごきげんよう、ルーティア」

「ごきげんよう、ベンジャミン先生」


　私は丁寧に一礼する。

「今日もよろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いしますね」


　ベンジャミン先生の授業はとてもわかりやすくて為になる。

　普段はゴミみたいなクソ会話をするより、本読んでた方がよっぽどマシという思考をしている私だけど、先生の授業は好きだ。


　それに、

「ルーティアさん。あなたは本当に聡明ですね」

　と、時々褒めてもらえるのも嬉しい。


「ありがとうございます！」

「この調子だと、もうそろそろ学園で学べる範疇の勉強は修了しそうですね。さすがです」

「えへへ……」


　家でずっと引きこもって本を読んで、時々ベンジャミン先生に勉強を教えてもらう。

　こんな感じで一生過ごせられたら良いのになあ。


　……まあ、無理なんだけど。