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 私の1日は、9時から始まる。


 優雅に目覚めた私は、メイドのカタリナによって身支度を整え、遅い朝食を取る。

 こんなにゆっくり出来るのは、私が学園を休み続けているからだ。


 既に食事を取っている両親と兄は、仕事をしに城へ出かけている。

 私は誰もいないダイニングで、1人のんびりと食事を運ぶ。


 それから、私は家庭教師が来るまで自由に過ごすことが出来る。

 と言っても、私のすることと言えば読書ぐらいだけど。


 最近ハマッているのは、庶民の作家が書いたらしい男爵令嬢物語。


 主人公は平民の女の子で、天涯孤独の身として細々と生きていた。

 そんな彼女の元に、ある日突然1人の使者が訪れる。

 その使者曰く、

「あなたは男爵の娘である。男爵は、本当はあなたの母と結婚したかったが身分の差ゆえ叶わなかった。あなたの母が行方を眩ませてからも男爵はあなたたちを探し続け、そしてようやく見つけることが出来たのだ」

 と。


 主人公は使者に連れられて男爵家の一員となり、様々な嫌がらせに立ち向かいながら自らの力で幸せを掴んでいく――と言うストーリー。


 なかなかのおとぎ話だが、私は好きだった。

 主人公はしっかりした性格だし、登場キャラクターも魅力的なものばかり。


 ただ、このシリーズを読み終わるたびに自己嫌悪に苛まれてしまう。


 彼女はどんどん前に進んでいくのに、自らの力で幸せを掴もうとしているのに。

 公爵家という恵まれた環境の私は、いつまで経ってもうじうじと外へ出ることが出来ていない。


 私の引きこもり癖は昔からだが、酷くなったのはセオドアにとある暴言をかけられてからだ。


「みんなお前のことが嫌いなんだよ。さっさといなくなれば良いのに。お前みたいな陰険な奴が婚約者とか、俺ん人生終わったわ」


 一言一句覚えている。


 あの野郎の言うことを聞いているみたいな状況はとても腹が立つが、その言葉のせいで私は外に出られなくなった。


 みんな私のことが嫌いなんだ。

 いなくなってしまえば良いと思っているんだ。


 当時仲良い子もいなかった私は、セオドアの言葉を鵜呑みにしてしまった。


 私は人が怖くて怖くて仕方がない。


 あの言葉が私を傷つけたいがための嘘だというのは良くわかってるけど、それでもまだ私はその言葉に縛られ続けている。
 
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