好きだから虐めてしまったなんて言われても、今更すぎて困るんですけど

プロローグ

　私ーー公爵令嬢ルーティアの最も嫌いな人間は、婚約者のセオドアだ。


　奴は私と同じく公爵家の人間で、私の両親とセオドアの両親の利害が一致した関係で婚約することになった。

　いわゆる、政略婚約。


　まあ貴族では良くあることで、まあ気が合わずともそれなりにやっていくのが貴族の処世術というわけなんだけど。


　私はどうしても、セオドアという男と上手くやっていくことが出来なかった。


　というのも、私はあいつに散々虐められたからだ。


　本が好きなインドア派の、はっきり言って地味な私。

　対するセオドアは、一言で表すと「ガキ大将」。


　そんな正反対の存在である婚約者がよほど気に入らなかったのか、セオドアは小さい頃から私を虐め続けた。


　家族から貰った大切な絵本をビリビリに破いては池に捨てられ、髪の毛を掴まれて振り回され。

「地味女！」

「ブス！」

　なんていう暴言は日常茶飯事。


　挙句の果てに、犬に追いかけ回されたり川に突き飛ばされたり。

　この2つは大怪我をしてしまった。


　何より腹が立つのは、こんな酷いことをするくせに大人の前では良い子ぶるところだ。


　結局周りの大人たちは、最後までセオドアが私を虐めていることに気づくことはなかった。


　あの頃は地獄だった。

　何も言えずただ泣きじゃくる私。

　ますます調子に乗ったセオドアは、仲間と一緒になって私を虐めた。


　おかげで私は極度の人嫌い。

　学園に通うことも出来ず、ただ自室で本を読んでいる引きこもりだ。


　それに比べて、セオドアは学園に通い、仲の良い友人たちとそれはそれは楽しい日々を過ごしている。


　なぜ加害者のセオドアが幸せそうにしていて、私はこんなにも不幸なのか。

　なぜ私の人生をめちゃくちゃにしたセオドアに天罰がくだらないのか。


　一体どうして？

　どうしてなの？