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第5章

建物

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 バスティンは、どんどんと私たちを町の外れへと連れていく。


 大通りから小道を抜けると、そこはまた違った景色が広がっていた。


 木造建築が所狭しと並んでおり、麻の服を着た子供たちが空き地で遊んでいる。


「大通りは、町の中心部だ」

 バスティンは教えてくれる。

「だいたいどこも同じだが、ちょっと道を外れると、こういう侘しい景色が広がっている」


 町の中でも、金持ちが住んでいるのが大通り。

 ここには、労働者たちが住んでいるのだろう。


 その小さな住宅街の一角に、目的地があった。


 他の家と同じ作りの建物。

 他と違うところと言えば、門のところに、厳重に鍵がかかっていたことだ。


「ここは?」

「ここは、俺の祖父の家だ」


 バスティンはそう言いながら、門の鍵を力ずくで取り払おうとする。


「大丈夫なんですか? それ」

 クロードが尋ねる。

「それ、人が勝手に入らないようにしてる鍵なんじゃ……」

「心配するな」

 バスティンは言った。
 
「確かにここは、騎士団に押収されていた場所だ。この鍵も、そのころにつけられたものだ。だが数年前に、バスティン家に返還されてな」

「それって、形上ってだけでは……?

『家は返すが、中は入るな』

 って意味の鍵なんじゃ?」

「そうかも知れねぇが、あいつらは何も言わなかったよ。つまりここは、無条件で俺の家だ。俺の家で何をしようが、あいつらに文句を言われる筋合いはねぇよ」


 彼はしばらくガチャガチャと1人で鍵を外そうと健闘していたが、やがて諦めると、

「魔法使うと、魔法痕が残るから嫌なんだよな」

 と、空き巣みたいなことを言って、錆ついた鍵に魔法をかけた。


 すると、ボロボロと鍵が砂に変わっていく。

「さあ、早く入ってくれ」


 バスティンは、私とクロードの背中を押した。

「こんなところ、誰かに見られちゃ面倒だ」

「結局、危ないってことじゃないですか……」
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