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第4章

案内

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 クリストファー王子は言う。


「父上からの通達がありました。セレナ王女に我が国を案内して差し上げろ、と。私たちで良ければご案内しますが、いかがいたしますか?」


 私は恐縮する。


 確かに隣国が一体どういうふうなのか、自国でも外へ出るのを許されていない私にとっては願ってもいない話だ。

 しかし――。


「王子殿下のお手を煩わせるわけには」


 私は首を振って丁重にお断りする。


 王子たちは、私と同様に忙しい身だ。

 その時間をわざわざ割いてもらう必要などない。

「観光なら、私と侍女だけでも大丈夫ですし」

「でも、誰かしら案内人は必要でしょう? 僕たちなら大丈夫ですよ。兄さんの誕生会のおかげで授業もなく暇ですしね」

「でも……」


 なおのこと断ろうとする私に向かって、クリストファー王子はにっこりと微笑む。

「案内しないと、僕たち父上に怒られてしまうんですよ。

『どうしてせっかく来てくれたセレナ王女を無下に扱うんだ!』

 って」


 小さな少年であるクリストファーが中年の男性の物真似をするのが面白くて、私は思わず吹き出す。

「それに、時間が空くと勉強させられますし。誕生日に勉強なんてしたくない――でしょう? 兄さん」


 クリストファーに話を振られ、ルーカスは無言で頷いた。

「そ、そうですか……」

「なら、決まりですね」

 と、クリストファー。


 ここまで言われてしまえば、断るすべがない。

「観光は、この城の王族専用馬車で行いましょう」

「は、はい。ありがとうございます」


 観光にはルーカスもついてくるのだろうが、まあクリストファーのいる手前、私に対して前世などの都合の悪い話はしてこないだろう。
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