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第4章

王子たち

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 国王陛下に謁見したあと、次に私が行わなければならなかったのは、王子たちに挨拶をすることだ。


 心底嫌な気持ちを抑えつつ、彼らのいる部屋を訪れる。


「お久しぶりでございます」


 私は侍女たちに「個人的な」プレゼントを持たせ、ドレスの裾に手を添えてお辞儀する。

「お久しぶりですね」


 クリストファー王子は、親しげに微笑んだ。

「お元気でしたか?」

「ええ。元気です。お2人はいかがでしょうか?」

「僕たちも元気ですよ――ねえ、兄さん?」

「あ、ああ……」


 兄の方、問題のルーカスは、怯えた目つきで私を見つめる。

「この度はお誕生日おめでとうございます」

 私は淡々と、しかし失礼のないように言う。

「ルーカス王子がこの1年ご無事に過ごせますよう、我が国を代表してお祈り申し上げます」

「……ありがとうございます」

 ルーカス王子は、相変わらずぶっきらぼうにそう言う。


 その態度が異常に腹立つが、変に激情すればまたあの日のように魔力が放出されて倒れてしまうので、深呼吸して心を落ち着かせる。


「それで、今回のプレゼントなのですが」


 私は侍女から贈り物を受け取り、説明する。

「我が国からルーカス王子へのプレゼントは、誕生会のときに目録をお伝えしますが、これは婚約者である私の個人的なプレゼントです」

「個人的?」


 ルーカスは意外そうな顔で私を見つめる。

「君が?」

「……何か?」

「い、いや。なんでも」


 私はため息をつき、話を続ける。

「こちらが花束、ペーパーナイフ、そして私が作ったクッキーとなっております。花束とクッキーには期限がございますので、早いタイミングでのお渡しとなりますが、ご了承ください」


「クッキー……」


 ルーカスは、私からプレゼントの山を受け取る。

「君が焼いたのか」

「ええ、そうですが」


 何回も言わせるな。


「そうか……」

「兄さん、良かったですね」


 クリストファーは兄に声をかける。

「ああ」


 ルーカスはしばし黙り込んでいたが、やがて口角を上げて言った。

「ありがとう、セレナ」

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