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第4章

書籍

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 私はクロードとバスティンという仲間を手に入れた。


 彼らは定期的に私に本を持ってきてくれる。

 私はそれをベッドの下やクローゼットの下に板を設置して隠し、夜な夜な読んだ。

 よくわからないところがあれば、深夜に部屋を抜け出して図書館へ行き、バスティンに質問をした。

 あの男は不思議な人間で、早く眠らせろと言う割に深夜までずっと図書館で本を読んでいる。

 本好きにありがちなのかどうかは知らないが、彼の中には食欲や睡眠欲、性欲という三大欲求と同じ列に、読書欲が組み込まれているのだろう。


 そこで、今まで読んだ内容をざっくりとまとめることにした。


 それが下記の内容だ。


 この世界には、魔力過多という症状を持つ子どもたちが生まれることがある。

 彼らは自分の持っている器以上の魔力を保有し、そのため常に体から魔力が排出されるという病気だ。

 魔力は多ければ多いほど良いというわけではなく、その器からはみ出た魔力は子どもたちの身体を蝕んでいく。

 その状態は、子どもたちが24時間ずっと誰かから魔法攻撃を受けているのと同じだからだ。

 だから、魔法過多を患った子どもたちは、幼くしてなくなることが多い。


 ここまでは、私が事前に知っていたことだ。


 しかし、問題はここからである。


 1回目の私が生きていた時代、「魔力過多」という病気は存在しなかった。

 すべての人間が魔力を持っているわけではなく、一部の人間、例えば王族や特別な地位の人間のみがその魔力を有していた。

 しかし私が死んでから数年後、その初めての「魔力過多」を患う子どもが誕生する。

 それ以降、魔力を持つ人間が劇的に増えていくと同時に、「魔力過多」で亡くなる子どもたちも増えていくことになる。


 魔力過多を患う人間に多い特徴は、その魔力の属性だった。

 魔力は火、水、土、風の基礎属性と、光、闇の上位属性にわかれている。


 ほとんどの人間の魔力は基礎属性だが、ごく稀に光、闇属性に生まれる人間がいる。


 その魔力過多を持つ子どもたちは、全員闇属性だったのだ。


 闇属性の人間は古来より、世界を破滅する存在として忌み嫌われていた。


 それは初代国王の時代にまで話を遡る必要がある。

 彼が国を治めたとき、1人の予言者が国に訪れた。

 彼は、

「闇属性を持つ子どもは、やがて世界を滅ぼすだろう」

 と、予言したという。


 それからというもの、それぞれの属性が判明すると、闇属性だった者は速やかに処分され、闇属性はこの世からいなくなった。


 いつの日かその風習は絶たれしまったようだが。

 私の生きていた時代には、確かもうなかったはずだ。


 そう言えば。


 私は思い出す。


 あの女、1回目の私を陥れたあの女は、確か闇属性だったはずだ。


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