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第3章

書籍

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 私はそのアイザック・バスティンの書いた本をペラペラとめくる。


 難しい言葉が連なっており、ぱっと見はよく理解出来なかった。

 だが、私に関係の大いにありそうな「魔力過多」について詳しく載っている本で間違いなさそうだ。


 なぜだろうか。


 私は不思議に思った。


 私に「アイザック・バスティン」の名前を教えたその誰かは、なぜ私に協力するのだろうか。


 私に情報を供給すると言うことは、すなわち自分の命を危険に晒すことだ。

 
 それは、セレナとして生まれ変わったこの短い間で既に証明されている。


 私に余計なことを話してしまった者は、みな顔に恐怖の色を浮かべていた。


 兄である国王陛下の指示で、私は具体的なことを何も教えてもらえない。

 
 中には追放された人間もいる。


 彼らは、殺されていないだけまだマシだ。


 そんな状況で、私に手を貸せばどうなるか。

 よっぽどの考えなしなのか、お人好しなのか、それともーー。


 私に何かを望んでいるのか。


 だが、その辺はとりあえずよそへ置いておこう。

 この場で悩む問題じゃない。


 長年触れられてすらいなかったらしい、本の天に、ベールのようにうっすらと埃が積もっていた。

 手のひらで軽く払い、私はそれを脇に抱える。


 ーーすると。


 パサッ。


 乾いた音が足元から聞こえた。
 

 何か軽いものが下に落ちたらしい。


 私は燭台で地面を照らしながら、それを探した。


 1枚の紙だった。


 
 数日前に、私の部屋に置かれていたノートの切れ端。

 その罫線の筋が一致している。


 本に挟まっていたものが、私がページをめくったことで滑り落ちてしまったのだろうか。


 私は、揺れる火に照らしてそれを読む。


 あの紙と同じ走り書きで、

「もっと読みたければ、地下の書庫に来るように」


 そう残されていた。
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