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第3章
謎の男
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アイザック・バスティン。
見たことも聞いたこともない名前だった。
少なくとも、セレナと普段から関わりのあるような教師たちの名前ではない。
名前から察するに、男だとは思うのだが。
「アイザック・バスティン、ですか?」
「ええ」
私は早速、それとなく大人たちに尋ねてみることにした。
「さあ……」
マナー講師は、首を傾げる。
「私には存じ上げない名前ですね」
私は彼女の様子を伺う。
どうやら、嘘をついているわけではないらしい。
本気で知らないようだ。
「この城で働いている人じゃないんですか?」
私は深追いしてみる。
「申し訳ないのですが、私は誰がどこで働いているのか知っているわけではありませんので」
「そうなんですか……」
私は少し落ち込む。
「差し支えなければ、どうして、その方の名前をお尋ねになったのかお聞きしても?」
「あっ、いやあ……」
私はなんと返せば良いかわからずに、言いよどんだ。
「き、聞いたことがある名前だなと思って。少し気になったんです」
「聞いたことがある?」
「ええ。そんな気がして」
私はこれ以上話を膨らませないように、マナーの教科書を開いて文字列を見つめた。
他の教師たちもそうだった。
誰もアイザック・バスティンという男のことを知らない。
マナー講師と同様、嘘をついているわけではないようだ。
本当に、誰も知らないのだ。
なら、この男は一体誰なんだ?
てっきり、この人物が私の部屋に入って来たのではないかと思っていたのだけれど。
違うとすれば、なぜこの名前を書いたメモを私の机の上に置いたのだろうか。
もしや、ただのいたずら?
いや、いたずらだろうがなんであろうが、その人物が私の部屋に無断で入って来たのは間違いない。
その時間、私が部屋にいないということを知っているはずだ。
そんな人間を、放っておくわけにはいかない。
しかし、これ以上この男の名前を尋ね回っても、かえって周囲の大人たちから不審に思われてしまう。
それはそれで問題だ。
ただでさえ、禁止されているはずの図書館に通い詰めていることを、何者かに気づかれそうになったのに――。
いや、もしかして。
私はある1つの考えが浮かび上がって来た。
アイザック・バスティン。
私も、周囲の大人たちも知らない名前。
だが、この男を知る鍵となる何かがあるとすれば――。
もう一度、図書館に行くしかない。
見たことも聞いたこともない名前だった。
少なくとも、セレナと普段から関わりのあるような教師たちの名前ではない。
名前から察するに、男だとは思うのだが。
「アイザック・バスティン、ですか?」
「ええ」
私は早速、それとなく大人たちに尋ねてみることにした。
「さあ……」
マナー講師は、首を傾げる。
「私には存じ上げない名前ですね」
私は彼女の様子を伺う。
どうやら、嘘をついているわけではないらしい。
本気で知らないようだ。
「この城で働いている人じゃないんですか?」
私は深追いしてみる。
「申し訳ないのですが、私は誰がどこで働いているのか知っているわけではありませんので」
「そうなんですか……」
私は少し落ち込む。
「差し支えなければ、どうして、その方の名前をお尋ねになったのかお聞きしても?」
「あっ、いやあ……」
私はなんと返せば良いかわからずに、言いよどんだ。
「き、聞いたことがある名前だなと思って。少し気になったんです」
「聞いたことがある?」
「ええ。そんな気がして」
私はこれ以上話を膨らませないように、マナーの教科書を開いて文字列を見つめた。
他の教師たちもそうだった。
誰もアイザック・バスティンという男のことを知らない。
マナー講師と同様、嘘をついているわけではないようだ。
本当に、誰も知らないのだ。
なら、この男は一体誰なんだ?
てっきり、この人物が私の部屋に入って来たのではないかと思っていたのだけれど。
違うとすれば、なぜこの名前を書いたメモを私の机の上に置いたのだろうか。
もしや、ただのいたずら?
いや、いたずらだろうがなんであろうが、その人物が私の部屋に無断で入って来たのは間違いない。
その時間、私が部屋にいないということを知っているはずだ。
そんな人間を、放っておくわけにはいかない。
しかし、これ以上この男の名前を尋ね回っても、かえって周囲の大人たちから不審に思われてしまう。
それはそれで問題だ。
ただでさえ、禁止されているはずの図書館に通い詰めていることを、何者かに気づかれそうになったのに――。
いや、もしかして。
私はある1つの考えが浮かび上がって来た。
アイザック・バスティン。
私も、周囲の大人たちも知らない名前。
だが、この男を知る鍵となる何かがあるとすれば――。
もう一度、図書館に行くしかない。
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