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第3章
内容
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その日から、日中は王女としての仕事をこなし、深夜は例の部屋に忍び込んで調べ物をするという生活を送るようになった。
何日も全く寝ないでいることは出来ない。
出来るだけ睡眠時間を取るために、朝はギリギリに起きて、夜は早めに寝る。
深夜に一度起きて部屋に向かい、まだ誰も起きてこないような時間帯に自室に戻る。
そうすると、睡眠時間が合計で5時間程度取れるようになるのだが、それでも7歳のまだ子どもの身体には堪えるものがある。
だが、仕方がない。
私が現状取れる対策は、それしかないのだから。
それにしても、歴代の国王たちが残した日記は、読み物として面白かった。
基本的にはその日のまつりごとについて箇条で書かれているものがほとんどだが、たまに面白い話があったりする。
例えば部下の失敗話だったり、子どもたちの成長だったり、噂話やちょっとした小噺、出来事。
それらを見ると、気持ちが安らぐ。
ほっこりする。
国王という立場ではあるが、この日記の中の彼らは、ちゃんと生きた人間だったことがわかる。
人の日記を読むのは楽しい。
でも、まだ私の望んでいるような情報は手に入らない。
輪廻転生について、魔力過多の子どもの話、凍結魔法。
他、何でも良い。
何か、私や「セレナ」に関連した情報はないのか。
しかし、今日もそれを見つけることが出来なかった。
私は落胆しつつ、自室に戻る準備をする。
落ち込まなくとも、私はまだ7歳だし、結婚適齢期はかなり先の話だ。
ここで調べ物をする時間はまだまだたくさんあるが、それでも見つからないのには辟易する。
私は立ち上がり、部屋の電気を消して梯子を降りる。
正直に言って、私は油断していた。
この生活を送るようになってしばらく経つが、未だに誰にも感づかれたり疑われたりすることがなかった。
体調のことは時々心配されたが、それは私があまり寝ていないということよりも、私に課せられたタスクが多いことによる疲労だとみんな思っている。
私が設けた時間配分の中で動けば、誰にも私の行動を察せられることはない。
そう考えてしまっていた。
誰かが、ふと深夜に廊下を歩くこともあるかもしれない。
喉が渇いて水を取りに行ったり、トイレに行ったり、どうしようもなく眠れなかったり。
誰かが、ふと深夜に図書館に行くこともあるのかもしれない。
私は音など気にせずに梯子を駆け下りた。
消えないように板で囲っていた燭台を取り、図書館の扉の方へ近づく。
数時間寝て、今日の勉強に備えよう。
周囲をまるで意識していなかった私は、誰かが図書館の中にいるということに一切気づいていなかった。
カサッ。
物音がする。
私の心臓が、急激に縮み上がった。
脈が速くなる。
何?
なんの音?
まさか――。
「……誰だ?」
その音の方角から、男の鋭い声が聞こえた。
何日も全く寝ないでいることは出来ない。
出来るだけ睡眠時間を取るために、朝はギリギリに起きて、夜は早めに寝る。
深夜に一度起きて部屋に向かい、まだ誰も起きてこないような時間帯に自室に戻る。
そうすると、睡眠時間が合計で5時間程度取れるようになるのだが、それでも7歳のまだ子どもの身体には堪えるものがある。
だが、仕方がない。
私が現状取れる対策は、それしかないのだから。
それにしても、歴代の国王たちが残した日記は、読み物として面白かった。
基本的にはその日のまつりごとについて箇条で書かれているものがほとんどだが、たまに面白い話があったりする。
例えば部下の失敗話だったり、子どもたちの成長だったり、噂話やちょっとした小噺、出来事。
それらを見ると、気持ちが安らぐ。
ほっこりする。
国王という立場ではあるが、この日記の中の彼らは、ちゃんと生きた人間だったことがわかる。
人の日記を読むのは楽しい。
でも、まだ私の望んでいるような情報は手に入らない。
輪廻転生について、魔力過多の子どもの話、凍結魔法。
他、何でも良い。
何か、私や「セレナ」に関連した情報はないのか。
しかし、今日もそれを見つけることが出来なかった。
私は落胆しつつ、自室に戻る準備をする。
落ち込まなくとも、私はまだ7歳だし、結婚適齢期はかなり先の話だ。
ここで調べ物をする時間はまだまだたくさんあるが、それでも見つからないのには辟易する。
私は立ち上がり、部屋の電気を消して梯子を降りる。
正直に言って、私は油断していた。
この生活を送るようになってしばらく経つが、未だに誰にも感づかれたり疑われたりすることがなかった。
体調のことは時々心配されたが、それは私があまり寝ていないということよりも、私に課せられたタスクが多いことによる疲労だとみんな思っている。
私が設けた時間配分の中で動けば、誰にも私の行動を察せられることはない。
そう考えてしまっていた。
誰かが、ふと深夜に廊下を歩くこともあるかもしれない。
喉が渇いて水を取りに行ったり、トイレに行ったり、どうしようもなく眠れなかったり。
誰かが、ふと深夜に図書館に行くこともあるのかもしれない。
私は音など気にせずに梯子を駆け下りた。
消えないように板で囲っていた燭台を取り、図書館の扉の方へ近づく。
数時間寝て、今日の勉強に備えよう。
周囲をまるで意識していなかった私は、誰かが図書館の中にいるということに一切気づいていなかった。
カサッ。
物音がする。
私の心臓が、急激に縮み上がった。
脈が速くなる。
何?
なんの音?
まさか――。
「……誰だ?」
その音の方角から、男の鋭い声が聞こえた。
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