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第1章

見たことのある部屋

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  目が覚めたとき、私は幼い子どもだった。


  今回はどうやら、赤ちゃんからのスタートではないらしい。

  私は少し安心する。また一からばぶばぶ言うのは正直きつい。1回目の人生は24歳、2回目は27歳で命を落としている私は、精神年齢的に赤ちゃんに立ち返るのが難しくなってきている。

  しかし、どうやら様子がおかしい。

  私は自力で目覚めたと言うよりも、無理やり起こされたような気分の悪さがそこにあった。

  ベッドはとても豪華だ。ローズウッドで出来ているが、良く見れば細かな装飾がなされている。

  どこかで見たことのあるような形であることはとりあえず置いておいて、私は身体を起こした。

  その途端、身体に起こった違和感に肩を強ばらせる。

「……魔法?」

  私は思わず呟いた。

  久しぶりに感じる空気感だった。前前世の頃、子どもに良くかけていたのを思い出す。


  魔法?

  子ども?


  既視感が酷い。

  まさか。

  私は瞼を擦り、周囲を見渡す。


  そこは、大きな部屋だった。2回目の私が、住んでいた1LDKよりも広い。その中で1つ、ポツンと高級そうなベッドが置かれている。周囲には、私のために与えられた勉強机や食事用のテーブル、椅子が置かれているものの、使われた形跡はない。全くもって生活感のない部屋だ。

  白で統一された家具たちは、よく見るとベッド同様、細かな装飾が成されていた。しかし、子ども用にするには随分大人びている。


  見たことがあった。

  私は思わず頭を抑える。


  ここは、私の部屋だ。

  厳密に言えば、1回目の私が最後に過ごした場所。


  あの女の策略にまんまと引っかかった私は、あれよあれよという間にこの場所に幽閉されていたのだ。かなりの年月が経過しているせいか、家具やその配置はかなり変わっているが、それでも私があのとき一日中眺めていたものたちが残っているのだ。このベッドしかり。


  私は気分が悪くなった。


  なぜ、私はまたここで生まれたのだろう。

  どうせなら、2回目の人生を送ったあの世界の方がマシだった。

  初めて愛する誰かに裏切られた土地。未だに忘れられない、トラウマが蘇ってきそうで怖くなった。


  私は、自分の両手を見つめる。まだほんの子どもであることがわかる、丸くてふにふにした小さい手。その桃色を帯びた白い肌に、上等な絹で出来た服がまとわりついていた。


  私は自分の状況を把握しようと、思考を巡らせる。


  ここは宮廷だ。

 そこに子どもの姿でいるということは、すなわち私はかなりの地位にいるということだ。ーー例えば王族とか。

  王族。

  嫌な響きだ。私はゾッとして震えた。

  しかし、例え王族だとしても、私は何故こんな辺鄙な場所にいるのだろうか。

  昔の私がいたときと変わっていないのならば、ここは宮廷の端に作られていた塔の一番上にある部屋だ。


  まさか。

  私は思った。

  また幽閉されているのか。


  しかし、チラッと見る限りでは、私を拘束するものは何もなかった。手錠も足枷も、私にはついていない。

「一体どういうこと……?」

  この少ない手がかりでは、現在の私の状況を掴むことは難しかった。

  ともかく一度部屋の内部を観察しようと私は立ち上がり、ベッドから這い降りようとする。


  コンコン。


  私がベッドから苦労して降りたところで、重厚な鉄の扉からノックの音が聞こえた。
  
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