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第1章
次の日
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「お嬢様。アメリお嬢様!」
次の日、厳しい声で私は目が覚めた。
布団を思いきりひっぺがえされ、せっかくの眠りを妨げられた私は、イライラしながら目を擦る。
「……何よぉ」
「朝です、お嬢様。早く起きてくださいよ」
強引に私を起こしたのは、公爵家から派遣されてきたメイドのジェニー。
年齢は私の5つ上で、生まれたころから私の面倒を見てくれている。
その関係もあって、私の強い希望で学園内の世話係として来てもらっているのだ。
「朝?」
目覚まし時計はまだ鳴っていないはずだけど、と私は窓を見る。
カーテンで外の様子は確認出来ないが、日はまだ差していないみたいだ。
「何時?」
「4時ですよ」
ジェニーはいそいそと部屋の電気をつけた。
「4時ぃ?」
私は盛大にため息をつく。
「早過ぎない?」
「何をおっしゃっているんですか。あなたが毎日4時に起こせと言っていたんですよ――早起きして身支度を整えてから婚約者様にお会いしたいと言っていたではありませんか」
「あー……」
確かにそう言ったのは覚えている。
今までは、毎日朝4時に起きて身支度を完璧にし、正門前でマートンを待つのが日課だった。
低血圧で朝が死ぬほど苦手だったのに、毎日毎日飽きもせずにそうしていた。
すべては、完璧で一番美しい私を見てもらうために。
美しい私を見て、私を好きになってもらうために。
今考えれば、ストーカーも甚だしい行為だったんだけど。
でもまあ、今はそれもどうでも良いことだ。
なんせ、私は彼を諦めたんだから。
「……もう良いわ」
「は?」
私はもう一度ベッドに横たわり、布団を被る。
「今日からは辞める。6時半になったら起きるわ」
「えっ」
「部屋に戻って寝てちょうだい。今まで早朝から活動させてしまってごめんなさいね」
「あ、あの……。いえ、わかりました」
主人の180度心変わりに困惑しているらしいジェニーだったが、有無を言わさない私の態度に気圧され、
「し、失礼いたしました。それではまた6時半ごろに」
と、部屋から出て行った。
次の日、厳しい声で私は目が覚めた。
布団を思いきりひっぺがえされ、せっかくの眠りを妨げられた私は、イライラしながら目を擦る。
「……何よぉ」
「朝です、お嬢様。早く起きてくださいよ」
強引に私を起こしたのは、公爵家から派遣されてきたメイドのジェニー。
年齢は私の5つ上で、生まれたころから私の面倒を見てくれている。
その関係もあって、私の強い希望で学園内の世話係として来てもらっているのだ。
「朝?」
目覚まし時計はまだ鳴っていないはずだけど、と私は窓を見る。
カーテンで外の様子は確認出来ないが、日はまだ差していないみたいだ。
「何時?」
「4時ですよ」
ジェニーはいそいそと部屋の電気をつけた。
「4時ぃ?」
私は盛大にため息をつく。
「早過ぎない?」
「何をおっしゃっているんですか。あなたが毎日4時に起こせと言っていたんですよ――早起きして身支度を整えてから婚約者様にお会いしたいと言っていたではありませんか」
「あー……」
確かにそう言ったのは覚えている。
今までは、毎日朝4時に起きて身支度を完璧にし、正門前でマートンを待つのが日課だった。
低血圧で朝が死ぬほど苦手だったのに、毎日毎日飽きもせずにそうしていた。
すべては、完璧で一番美しい私を見てもらうために。
美しい私を見て、私を好きになってもらうために。
今考えれば、ストーカーも甚だしい行為だったんだけど。
でもまあ、今はそれもどうでも良いことだ。
なんせ、私は彼を諦めたんだから。
「……もう良いわ」
「は?」
私はもう一度ベッドに横たわり、布団を被る。
「今日からは辞める。6時半になったら起きるわ」
「えっ」
「部屋に戻って寝てちょうだい。今まで早朝から活動させてしまってごめんなさいね」
「あ、あの……。いえ、わかりました」
主人の180度心変わりに困惑しているらしいジェニーだったが、有無を言わさない私の態度に気圧され、
「し、失礼いたしました。それではまた6時半ごろに」
と、部屋から出て行った。
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