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第5章
会議①
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「で、どうする?」
「……」
「……」
「……」
「……」
会議の真っ最中。
ウル殿下の投げやりな質問に、誰も何も答えなかった。
それはそうだ、と思う。
だって、そんな簡単に解決出来ることじゃない。
資材不足の件は。
「誰かないのか? 良い意見は」
ウル殿下は、会議室中を見渡す。
「おい、アオ。ないか?」
急に当てられ、ビクリと身体を緊張させたのは、彼の後ろに仕えていた衛兵のアオだった。
「お、俺は……」
まさか自分が名指しされるとは、会議に参加していないのにと言いたげな顔で、彼はもぞもぞと口を開ける。
「あの、マハナ国の森から木を伐採したりとか、山を切り崩して土を使ったり、なんていうのは出来ないんですか?」
「今回の工事は」
ウル殿下が説明した。
「通常の、俺たちマハナ国が今まで散々やってきたような工事じゃない。他国のような、しっかりと整備された国にしたいんだ。お前も見ただろう? ブローディアや他の国の景色を」
遠慮がちに、アオは頷く。
「ブローディアが俺たちを貿易の枠組みから排除したとはいえ、俺たちにとってブローディアが手本にすべき相手であることに変わりはない。あんなふうに、人が住みやすく、便利な町並みにしたいと考えている。例えば、車が通りやすい平らな道だったり、なんてものを」
「そのため、必要になってくるのは特殊な素材です」
アーロ司書が、殿下の言葉を引き継ぐ。
「しかし、それは魔法具や人の魔力を用いたことで生まれる化学製品。大変貴重な品です」
「つまり」
誰かが言った。
「ブローディアに目をつけられている今、それを手に入れる手段はないと」
「ないことはありませんがね」
別の誰かが言葉を発する。
「密輸なんて手もありますが。まあ、リスクが大きい。失敗すれば、どれだけの不利益を被るか」
「魔法の力を持っていない他の国は、どうやってそれを手に入れたの?」
私はアーロ司書に質問する。
「ブローディア国に貿易を持ちかけたか、もしくは自国で似たようなものを作ったか」
「それでは、この国でも作ることは出来るんじゃないの?」
「……」
「……」
「……」
「……」
会議の真っ最中。
ウル殿下の投げやりな質問に、誰も何も答えなかった。
それはそうだ、と思う。
だって、そんな簡単に解決出来ることじゃない。
資材不足の件は。
「誰かないのか? 良い意見は」
ウル殿下は、会議室中を見渡す。
「おい、アオ。ないか?」
急に当てられ、ビクリと身体を緊張させたのは、彼の後ろに仕えていた衛兵のアオだった。
「お、俺は……」
まさか自分が名指しされるとは、会議に参加していないのにと言いたげな顔で、彼はもぞもぞと口を開ける。
「あの、マハナ国の森から木を伐採したりとか、山を切り崩して土を使ったり、なんていうのは出来ないんですか?」
「今回の工事は」
ウル殿下が説明した。
「通常の、俺たちマハナ国が今まで散々やってきたような工事じゃない。他国のような、しっかりと整備された国にしたいんだ。お前も見ただろう? ブローディアや他の国の景色を」
遠慮がちに、アオは頷く。
「ブローディアが俺たちを貿易の枠組みから排除したとはいえ、俺たちにとってブローディアが手本にすべき相手であることに変わりはない。あんなふうに、人が住みやすく、便利な町並みにしたいと考えている。例えば、車が通りやすい平らな道だったり、なんてものを」
「そのため、必要になってくるのは特殊な素材です」
アーロ司書が、殿下の言葉を引き継ぐ。
「しかし、それは魔法具や人の魔力を用いたことで生まれる化学製品。大変貴重な品です」
「つまり」
誰かが言った。
「ブローディアに目をつけられている今、それを手に入れる手段はないと」
「ないことはありませんがね」
別の誰かが言葉を発する。
「密輸なんて手もありますが。まあ、リスクが大きい。失敗すれば、どれだけの不利益を被るか」
「魔法の力を持っていない他の国は、どうやってそれを手に入れたの?」
私はアーロ司書に質問する。
「ブローディア国に貿易を持ちかけたか、もしくは自国で似たようなものを作ったか」
「それでは、この国でも作ることは出来るんじゃないの?」
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