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第5章
過去② ~アオ視点~
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その日づけで、俺は殿下の側近になった。
側近とは名ばかりで、俺よりも賢いケイキとかいう男が基本的にウル殿下の頭脳として動いていたから、俺は主に殿下を傍で守る存在となった。
まだ10にも満たない、なんの経験もない俺をなぜ側近に選んだのか。
いつか、殿下に尋ねたことがある。
そのときは、
「ん? ……ああ、まあな」
というふうにはぐらかされてしまったが。
ともかく、俺は殿下のおかげで無事職にありつけることが出来た。
衛兵にもなれたし、給料も安定して手に入ることが出来た。
殿下の手厚い支援で、病気の母は治療を受けられるようになった。
結局助かりはしなかったが、母の最期は家族に見守られた、少なくとも孤独なものではなかった。
殿下に仕えるようになってから、俺はなんとなく王族の事情について察するようになった。
決して、ただ何も考えずに羨ましいと思える生活を送っているではないことに。
そのある意味孤独な状況が、殿下の性格を形成していたことに。
殿下はずっと、一線を引いて俺たちに接していた。
信用しているようで、信頼はしていない。
誰にも本音を出さす、じっと様子を伺うような、そんな慎重な性格――。
子どものころは、その殿下の性格に少しショックを受けたこともあった。
俺を信じていないんだ、みたいな。
だけど、今になってわかる。
人を信じられない性格は、一朝一夕で治るものではないということを。
あの人は、俺とはまた違うベクトルで苦しんできたのだ。
それを救ってやれる人は、きっといずこかに――。
俺はずっと、そう思っていた。
側近とは名ばかりで、俺よりも賢いケイキとかいう男が基本的にウル殿下の頭脳として動いていたから、俺は主に殿下を傍で守る存在となった。
まだ10にも満たない、なんの経験もない俺をなぜ側近に選んだのか。
いつか、殿下に尋ねたことがある。
そのときは、
「ん? ……ああ、まあな」
というふうにはぐらかされてしまったが。
ともかく、俺は殿下のおかげで無事職にありつけることが出来た。
衛兵にもなれたし、給料も安定して手に入ることが出来た。
殿下の手厚い支援で、病気の母は治療を受けられるようになった。
結局助かりはしなかったが、母の最期は家族に見守られた、少なくとも孤独なものではなかった。
殿下に仕えるようになってから、俺はなんとなく王族の事情について察するようになった。
決して、ただ何も考えずに羨ましいと思える生活を送っているではないことに。
そのある意味孤独な状況が、殿下の性格を形成していたことに。
殿下はずっと、一線を引いて俺たちに接していた。
信用しているようで、信頼はしていない。
誰にも本音を出さす、じっと様子を伺うような、そんな慎重な性格――。
子どものころは、その殿下の性格に少しショックを受けたこともあった。
俺を信じていないんだ、みたいな。
だけど、今になってわかる。
人を信じられない性格は、一朝一夕で治るものではないということを。
あの人は、俺とはまた違うベクトルで苦しんできたのだ。
それを救ってやれる人は、きっといずこかに――。
俺はずっと、そう思っていた。
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