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第4章
開始
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試食会は、王宮の中心部にある大広間で開催することになった。
だいたい数百人は気兼ねなく自由に過ごせるくらいの広い空間で、そこにいくつかの丸いテーブルを設置する。
真っ白なテーブルクロスの上には、円状に底の浅い皿が並んでいる。
その皿の中に、この城のコック長が作成したチョコレートが飾られていた。
色とりどり。
まるで宝石みたいに、思わずため息がこぼれそうなほど美しいお菓子だ。
子どものころ、小さなブリキ缶にたくさん詰め込んだ宝物を見つめているような満足感を覚えつつ、私はここまでの道のりを反芻する。
試食会の開催が決定し、それに向けてコック長と私は昼夜問わずチョコレート製作に勤しんだ。
おかげで食事の栄養バランスが崩れ、肌が危うく恐ろしい目に遭いかける。
私は2人の召使たちとウル殿下にこっぴどく叱られた。
「せっかく栄養バランスの良いお食事をお持ちしているのに」
「甘いものを食べるのは良いですけど、食べ過ぎるのはよくありませんよ」
ウル殿下は私の頬を軽く抓って、
「太ったか?」
と、少し顔をしかめた。
「えっ」
私は自分の顔に両手を当てる。
「嘘」
「嘘じゃねぇよ。顔が丸くなった。このままと、試食会用のドレス、着れなくなるぜ」
私は仕方なく、彼らの言う通りにチョコレートの摂取量を制限した。
その後コック長を中心に、彼の部下や城の召使たちがチョコレート作りを手伝う。
四六時中厨房から甘い匂いが漂っているのだから、当然のごとく私とコック長が何かしているという噂が城中に広がった。
やがてそれがお菓子、しかも「チョコレート」というマイナーなものであるということが判明し、来る大試食会にて、この国の主力商品であるパイナップルの次であること。
その事実が、数週間が経過したのち、王宮の中では常識的なものとなった。
そのころ、ちょうど私が糖分の摂取制限を設けようとしていた時分だったから、ちょうど良いと、私は味見係をほかの者に任命した。
コック長にも、チョコレート商品のレベルを向上させるために、出来るだけたくさんの意見が必要だと伝えていたので、実直な彼は私の言う通りに動き、結果、この城で働く者の中で、ウル殿下以外チョコレートを口にしたことのない人間など1人もいないという状況になった。
食べた者は、総勢100人。
つまり、みんなが太鼓判を押すほどの自信作が、テーブルに並んでいるわけだ。
テーブルに置かれているのは、固形チョコレートだけではない。
豪奢なチョコレートケーキやチョコレートクッキー、チョコレートムース、そして――。
チョコレートフォンデュ。
ブローディアなどの比較的裕福な国で、「チーズフォンデュ」というものがよく食べられている。
私は食べたことないけど。
どろどろに溶けたチーズの海に、バケットやソーセージ、ベーコン、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもなどを浸して食べるというものだが、それをチョコレートでやってみようという試みだ。
チョコレートに合わせて、同じく甘いものであるバナナやイチゴ、オレンジなどを具材とする。
チョコレートフォンデュは、大広間の中心に設置されている。
ファウンテンという、噴水のようにチョコレートを上から流す装置を使っているから、目に見えて豪華に感じた。
「準備は整ったようだな」
トラウマ尽くしで顔色の悪いウル殿下だったが、さすがは王族といったところか、なんでもないふうにそう言った。
「それでは、試食会を始めよう。広場の扉を開けてくれ」
だいたい数百人は気兼ねなく自由に過ごせるくらいの広い空間で、そこにいくつかの丸いテーブルを設置する。
真っ白なテーブルクロスの上には、円状に底の浅い皿が並んでいる。
その皿の中に、この城のコック長が作成したチョコレートが飾られていた。
色とりどり。
まるで宝石みたいに、思わずため息がこぼれそうなほど美しいお菓子だ。
子どものころ、小さなブリキ缶にたくさん詰め込んだ宝物を見つめているような満足感を覚えつつ、私はここまでの道のりを反芻する。
試食会の開催が決定し、それに向けてコック長と私は昼夜問わずチョコレート製作に勤しんだ。
おかげで食事の栄養バランスが崩れ、肌が危うく恐ろしい目に遭いかける。
私は2人の召使たちとウル殿下にこっぴどく叱られた。
「せっかく栄養バランスの良いお食事をお持ちしているのに」
「甘いものを食べるのは良いですけど、食べ過ぎるのはよくありませんよ」
ウル殿下は私の頬を軽く抓って、
「太ったか?」
と、少し顔をしかめた。
「えっ」
私は自分の顔に両手を当てる。
「嘘」
「嘘じゃねぇよ。顔が丸くなった。このままと、試食会用のドレス、着れなくなるぜ」
私は仕方なく、彼らの言う通りにチョコレートの摂取量を制限した。
その後コック長を中心に、彼の部下や城の召使たちがチョコレート作りを手伝う。
四六時中厨房から甘い匂いが漂っているのだから、当然のごとく私とコック長が何かしているという噂が城中に広がった。
やがてそれがお菓子、しかも「チョコレート」というマイナーなものであるということが判明し、来る大試食会にて、この国の主力商品であるパイナップルの次であること。
その事実が、数週間が経過したのち、王宮の中では常識的なものとなった。
そのころ、ちょうど私が糖分の摂取制限を設けようとしていた時分だったから、ちょうど良いと、私は味見係をほかの者に任命した。
コック長にも、チョコレート商品のレベルを向上させるために、出来るだけたくさんの意見が必要だと伝えていたので、実直な彼は私の言う通りに動き、結果、この城で働く者の中で、ウル殿下以外チョコレートを口にしたことのない人間など1人もいないという状況になった。
食べた者は、総勢100人。
つまり、みんなが太鼓判を押すほどの自信作が、テーブルに並んでいるわけだ。
テーブルに置かれているのは、固形チョコレートだけではない。
豪奢なチョコレートケーキやチョコレートクッキー、チョコレートムース、そして――。
チョコレートフォンデュ。
ブローディアなどの比較的裕福な国で、「チーズフォンデュ」というものがよく食べられている。
私は食べたことないけど。
どろどろに溶けたチーズの海に、バケットやソーセージ、ベーコン、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもなどを浸して食べるというものだが、それをチョコレートでやってみようという試みだ。
チョコレートに合わせて、同じく甘いものであるバナナやイチゴ、オレンジなどを具材とする。
チョコレートフォンデュは、大広間の中心に設置されている。
ファウンテンという、噴水のようにチョコレートを上から流す装置を使っているから、目に見えて豪華に感じた。
「準備は整ったようだな」
トラウマ尽くしで顔色の悪いウル殿下だったが、さすがは王族といったところか、なんでもないふうにそう言った。
「それでは、試食会を始めよう。広場の扉を開けてくれ」
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